戦争

 移動開始から、二十日以上が経過した。

 経験したことのない暖かさがあり、皆、厚い毛皮の服を脱ぎ始めたところだった。

 そこで、初めて別の集落と遭遇した。

 運が悪かったのは、その集落は、近隣の別の集落と抗争の最中だったということだ。

 集落の民が、遠く北から旅をしてきた者たちに違和感を覚えるより先に、攻撃がされた。

 遠くから矢がられ、ニクラムは心臓に矢を受け、長く伸ばした灰色の髭に鮮血を飛ばした。

 ニクラム長は即死だった。あってはならないことである。

 言葉も通じないようで、戦争になった。

 その集落では三〇〇人ほどがいたが、小競り合い程度しかしたことがない地域だ。

 大型の魔獣に対する備えとして、ニクラムを射った者がいた木組みの高台や頑丈がんじょうな木の柵があったが、戦争への備えはそれほどでもなかった。元・ニクラム隊はすぐに侵入を開始した。

 先に攻撃してきたのは、長を殺したのはあちらである。

 イェードは剛力でファングボーンをひとぎすると、さながらイェルダントの一撃のごとく、高台の一つを根本から破砕した。

 弓を持った兵士とも呼べない男が高台の上から落下して、骨の折れる音が鳴る。

 イェードはその男の頭を、ファングボーンで潰した。

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