第13話

私が父親を最後見たのは、床に頭を擦り付けて謝っている姿。

私が見上げた時、母親はどんな顔をしていたのだろうか。

どれだけ謝っても、弁解しても、やってしまった事は取り返しがつかないのに。


好孝に連絡すると直ぐに病室に来てくれた。

ガラッと扉が開くと、心配そうな顔の好孝が立っていた。

「好孝・・・」

「杏子、大丈夫か」

こちらに向かって歩き始めた好孝に豪くんは詰め寄り、右頬を殴った。

好孝が思い切り尻もちをつき、唇からは殴られた影響か血が流れていた。

「豪くん・・・」

「どういうつもりだ。浮気して捨てられた杏子にまた近寄って、子供まで作って・・・・お前は何がしたいんだ。」

「赤ちゃんて・・・杏子お前妊娠したんか?」

「・・・・・」

「杏子・・・・そんな・・・・」

「おい、俺の質問に答えろよ。お前、何回杏子の事めちゃくちゃにすれば気が済むんだ。」


豪くんが好孝の胸ぐらを掴んで問いただす。

「間違っとることなんてもう分かっとる。でも、杏子と別れた後分かったんや。俺には杏子しか居なかったって。探したけど、杏子はもう居なくて。そしたら自分が担任する事になったクラスに杏子が居て・・・もう運命だとしか思えんかった」

「ふざけんなよ、お前!!」

「豪くんやめて!いっ・・・」

立ち上がろうとした時、急激にお腹に痛みが走った。

「杏子?どうした、杏子!」

意識が遠のく中、私はどちらの手を握ったのだろう。

そのまま私は意識を失った。






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