香水のかほり (続)

舞季

第1話

「ママー!早く!」

可愛いピンクのワンピースを着た子が私に手を振る。

「そんなに急いだら転んじゃうわよ!」

そう言う私の事も気にせず走っていくのを見て、思わず笑みが零れた。


あれから数年後私は豪と結婚し、長女沙莉を産んだ。

子供の成長は早いものであっという間に沙莉は今年で小学生になる。

「いっぱい友達出来るといいな!」

「元気よく挨拶すればきっと沢山出来るわ。」

「うん!」

嬉しそうに微笑む沙莉の頭を撫でて、桜が咲く門をくぐった。


体育館には沢山の親が自分の子供はいつ出てくるのかとざわめいていた。

私は今日仕事の都合で来れなかった豪に見せるためと、携帯を握りしめながら沙莉を待っていた。


「大変長らくお待たせ致しました。新入生の入場です。暖かい拍手でお迎え下さい。」

司会の女性教師が言うと沢山の1年生が列を作り、担任の後を礼儀良く歩いてくる。

沙莉のクラスは確かそろそろのはずと携帯のカメラを構えた。

その時だった。

私の目の前には、見覚えのある人物が沙莉の前を歩いていた。

「なんで・・・・・」

数年経っても変わらない優しい微笑み。

確かに私はあの人の事を知っている。


「好孝・・・」


鼻の奥に香るはずの無い懐かしい香水の香りがした気がした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る