第18話

黒いローブの男の遺体を《インベントリ》に入れると、僕は『地下神殿』の最奥を物色し始めた。

そして、特に何かを入手することもなく、最後の石室にたどりついた。

そこには、一つだけ大きな棺が据え付けられていた。


さすがに、僕も墓荒らしのような真似はしたくないので、どうしたものか迷っていると声が聞こえてきた。


――私を包んでいる布を持っていきなさい――


突如聞こえた声に僕が困惑していると。

『遠慮なく持っていけ。聖骸布だ。良い素材になるぞ』

タナカもそういうので、棺を開けた。

すると、そこにはミイラと、それを包む白い布が収められていた。


いったいどれほど昔なのかも分からないミイラと白い布だった。

こんなものを持ち去って大丈夫なのだろうか。


その布は純白を保ち、聖なる気を発している。

迷ったが、僕はミイラの遺志に従うことにした。


僕は心の中で詫びながら、白い布を手に入れ、棺を閉じた。

最後に祈りをささげた後、僕は石室を後にしたのだった。


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「これはまた、ずいぶんと珍しい品ですね。かなり高位の聖人がまとっていた聖遺物かと。邪気を払う神聖を帯びているように思います」

《聖銀のネックレス》の際にお世話になった小太りのおじさんが、鑑定結果を僕に告げた。


「これを生地にして装備品を二点作るとなると、相応の技術をもつ針子でないと対応できないかもしれませんが……」

僕は無言でうなずくと、《インベントリ》からコインの入った革袋を取り出し、テーブルの上に置いた。

僕は、相場など分からないので、金額でゴリ押しをする。

「では……。二時間ほどで仕上げて、必ず製品をお渡しいたします」



街の大店で商談を終えると、久しぶりにひげ面のおっさんの店に向かう。

オークロードの討伐の際に何も言わずに去ってしまい、内心気まずいかった。

それに、『地下神殿』ではアンデッドばっかりで納品するような収穫もなかった。

そうしたことから、足が遠のいていたのだ。


僕は店の中に入ると、受付のモニカさんが立ち上がって、僕を迎え入れてくれた。

「なんで全然顔を出してくれなかったんですか!」

カウンターの奥から出てくると、僕の胸に飛び込んできた。

「あのあと、てんやわんやで大変だったんですよ!タナカさんは突如いなくなってますし!精算もそのままになっていますし!」

……しばらくの間、モニカさんに怒られたのだった。


ひとしきり僕に怒って落ち着いたモニカさんに、金色のカードを渡した。

すると、彼女は急に仕事モードになり、カウンターの奥に戻った。


僕が彼女のいるカウンターの前に行くと、カウンターの上に大量の革袋を取り出し、金額について説明をしだす。

だが、僕はあいもかわらず確認をしないで、革袋を《インベントリ》に収納する。

そんな僕に彼女は呆れながら、白金で作られた会員証を渡してくる。

またも、会員証の交換時期が来たようだった。


「とうとう白金等級です。おめでとうございます!これだけのスピード記録は、史上初めてですよ!」

モニカさんがヨイショしてくる。

思わず照れてしまった僕は、早々に奥の部屋に入った。


そこで、職員さんの前で、《インベントリ》から黒いローブの男の死体をだした。

僕に内臓を叩き潰されて、見る影もない。


「これは……。悪魔神官か?いや、だが……魔力の残滓が桁違いだ……」

なぜか興奮して、黒いローブの男の死体を検分する職員さん。

変態かな?

「ノーマルとは……?特殊個体……」

長くなりそうなので見切った僕は、大店に製品を取りにいくことにした。

聖骸布を預けてから、ちょうど二時間ぐらい経ってるし。



大店につくと、小太りのおじさんは僕のオーダーした装備品を仕上げてくれていた。

急なお願いにもかかわらず、僕は短時間で仕上げてくれたことにお礼を言うと、店を去った。


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後日、僕はクロエに誕生日プレゼントとして、蜂蜜が入った瓶と、聖骸布からできたリボンをプレゼントした。

彼女の黒髪に、白いリボンがとても映えた。

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