Mission03: 救助要請

 時は少し前後する。


 輸送艦ポートダックと護衛機は必死に帝国軍から逃げていたものの、艦とAdvancerアドヴァンサーでは速力は比較にならない状況だった。せいぜいが音速程度の艦は、何倍もの速度を有するAdvancerアドヴァンサーに軽々と追い付かれる上、護衛のAdvancerアドヴァンサーである暗緑色の機体、“アルガム”や“アルガム・アレス”――アレスは胸部に、山吹色のラインマーキングが施されている――も、ポートダックに足を合わせざるを得ない状況である。


 さらに悪いことに、アルガムやアルガム・アレスの性能は、リクシアスと比較して数段劣る。

 第4世代であるアルガム系列の機体と第5世代のリクシアスでは、どちらがより洗練され、空の戦いに向くよう仕立てられたかは言うまでもなかった。

 その上数でも劣って――アルガム系列が計8機に対し、リクシアスたちは16機存在する――いるため、ポートダック側の圧倒的不利は明らかである。


 結果として、アルガム系列の機体で編成された護衛部隊――名を“パレント隊”と呼ぶ――は、徐々に数を減らしていった。


 そこに、帝国機から通信が繋げられる。


『ただちに武器を投棄し、投降せよ。従えば命は保証しよう』


 残存機はたったの2機。アルガム・アレスが1機と、アルガムが1機だ。そしてポートダックは、最低限の自衛用火器こそ装備しているものの、この数相手では不足が過ぎるというものである。

 ポートダックたちに選択肢は無いように思えた。だが。


「断る」

『ほう、なぜだ?』


 アルガム・アレス――そしてパレント隊の隊長――は、力強く言い放つ。


「俺たちが死んでも、荷物運べりゃ勝ちだからな!」


 そう。彼らパレント隊の使命は、ポートダックの護衛だ。

 彼は残る1機の僚機ともども、使命を果たして死ぬことを望んでいたのである。


 そんなパレント隊を見て、先ほど通信を繋げた灰色のリクシアスのパイロットは嘲笑する。


『愚かな……この近くに基地が無いことは知っている。援軍は来ないのだぞ?』

「それでも、俺たちはやることをやって死ぬだけだ」

『ならば望み通りにしてや――』


 リクシアスがロングソードを構え、アルガム・アレスに向かった瞬間。


 どこからか放たれた紅の閃光が、リクシアスを一撃で打ち砕いた。


「あれは!? 援軍か……!」


 アルガム・アレスの視界には、漆黒の大型Advancerアドヴァンサーが1機と、随行する派手なカラーリングをした4機のAdvancerアドヴァンサー


 飛翔戦艦ゲルゼリアから差し向けられた救援は、ぎりぎり間に合ったのであった。


     ~~~


 右肩に装備していたビームライフルを格納したシュヴァルリト・グランは、すぐさま両腰の長剣を抜き放つ。シュヴァルリト・グランの体躯たいくからしてもやや長いそれは、並のAdvancerアドヴァンサーの全高とほぼ同等の長さを誇っていた。


 シュヴァルリト・グランを操るゼルゲイドは一瞬だけポートダックたちを見ると、すぐさまリクシアスの掃討に移る。ゲルゼリアのリクシアスとグリンドリンも同様にして帝国のリクシアスを狩りだしたため、たちまち乱戦の様相を呈した。


 シュヴァルリト・グランは撃ってくる銃弾をかわし、ときにはその重厚な装甲でもって物理的に弾き飛ばす。帝国機が格闘戦に移る暇も与えず、すれ違いざまに大剣で叩き切った。

 プロメテウス隊のリクシアスとグリンドリンは、2機一組を維持しながら敵のリクシアスを1機ずつ屠ってゆく。1機で注意を惹き、もう1機が砲弾や斬撃を浴びせて確実に仕留めた。


 と、ある程度帝国のリクシアスが減じたところで、プロメテウス1ワンのグリンドリンとプロメテウス2ツーのリクシアスがポートダックに接近する。




「こちらは飛翔戦艦ゲルゼリアに所属する部隊、プロメテウス隊です。貴方がたの救助要請を聞き届け、救援に参りました」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る