第44話『ようやく出発だ……』

それから貴族のおっさんの計らいで有能なメイド達は小一時間程でうちのパーティーの注文の品々を用意して見せた。


代わりに貴族のおっさんからその扉の先には何があったのかとかどんな冒険をしたのかを戻ってきたら話して欲しいと言われた、あのおっさんは本当に冒険の話とかが好きなんだろうな。


その話1つの為に結構な量の旅の物資を戴いたからな、まぁおっさんに会うために来るのは俺的には嫌だけど、これだけされたら仕方ないか……。


「よしっアカシアさん荷物は全てプレアさんにのせられましたよ!」


「分かった、プレアの中は狭くなったけど乗りたいヤツはいるか?2人くらいならいけるぞ?」


「私、乗ってみたいです!」


「私も歩きたくないわぁ~」


姫さんとフリーネだな、それじゃあ残りは歩きになるな、三十路リーマンの俺には長距離を歩くのもキツそうだが仕方ないか。


それでも全身鎧の金ピカよりかはまだマシだろうからな、金ピカは心底残念そうな顔をしている。


「相棒、荷物は私が全部持ってプレアには相棒も乗れば良くないか?」


「いやっ道中にもモンスターとの戦闘は必ずあるだろうからおたくは戦闘の方で活躍してくれ」


「分かったぞ!」


姫さんが当たり前のように来るので黒いヤツも当たり前のように来るようだ。

しかしプレアには乗れないので車外から姫さんの斜め後ろの位置をキープしている。


ちなみに出発するメンバーはと言うと。


俺にユーレシア、レイナとフリーネ。


プレアとセレン、金ピカ。


姫さんと黒いヤツ。


以上である、プレアとセレンもパーティーメンバーとして数えると9人編成と言う訳だ。

ゲームだと人数がゴチャゴチャしてるだろうが、命懸けの冒険なら人数は用意出来るだけしたい。


まぁいつの間にかこんな人数になっていただけだけどな。


「よし………それじゃあ行くか」


俺の言葉に冒険者や騎士やお姫様が答える。


そして俺達はセイージュの街を後にした。


◇◇◇


ブロロロロロッ。


プレアは行くスピードは遅い、何故なら俺や他の歩き組に合わせてくれてるからだ。


「すみません、この丸い物は何です?」


『それはハンドルです、っあその辺りは触ってはいけませんよ?』


「分かりました!」


そしてプレアを姫さんも普通に受け入れている、金ピカ曰くゴーレムの一種だと思ってくれているんじゃないかと言われた。


みんな自然にプレアを受け入れているのは、やはりファンタジーな世界観が所以なんだろうか。

セイージュの街を出て1時間もすればたまにモンスターが現れる様になったのだが………。


完全にユーレシアやレイナ、それにセレンが暇つぶしの相手として倒している。


基本雑魚ばかりらしいのでユーレシアは見学しながら助けがいるなら助けるって感じで、レイナとその肩にプルンと乗ったセレンがモンスターを退治している。


レイナもついこの間まで駆け出し冒険者だった筈だが、結構な戦闘をこなしてきたからか肝が据わった戦い方ってのをするようになった。


当たり前のように1人で数体のゴブリンを相手にして圧倒している。

駆け出しだと思って同レベル意識が僅かでもあった俺は少し寂しいと感じてしまった。


まぁ近頃はまともにモンスターとの戦闘すらしていないので、戦ったら多分ゴブリンにも負けそうだけどな。

ボロが出ると嫌だから戦わないんだよ。


まぁまだポンコツ腹ペコ魔導師もいるし大丈夫だ、雑魚は俺1人じゃない。


「………?、どうかしたの?」

「何もないよ、それよりもうそろそろ夕方になるし、晩御飯の準備をしないか?」

「するわ!」


準備をすると返事をしながら頭の中は食べる事しか考えていない、俺はコイツが調理をしている所なんて見たことないからな。


そしてこの『地下世界』とか『迷宮大陸』とかって名前で呼ばれてるダンジョンには時間の経過で夕方もあるし夜もあるのだ。


何故かは知らん、ファンタジーだからだろうと言うことにしている俺だ。


地肌をさらした舗装なんてありもしない道にプレアを止めて詰めこんだ荷物から調理道具とか材料を取り出す。


戦闘ではスライム程の役にも立たない俺だが、料理なら少しは出来る自信がある。

伊達に三十まで1人じゃないんだよ、なんか言ってると悲しくなってきた。


当然この世界は俺が生きていた世界じゃないので包丁で切る野菜とかは見たことがない物が多数ある、この世界でも独り身だから料理も何度かして毒とかがない、そしてセイージュでもよく食べられてる代表的な物だけをチョイスして持ってきてもらった。


プレアの土魔法でテーブルとキッチンもどきの調理台を用意してもらった、四角い岩である。

その上にまな板を置いて更に野菜を並べる。


根菜類も形が独特だ、星形のジャガイモ見たいのだとかオレンジ色のカブっぽいのとかもあったぞ。


そんな異世界産の野菜とか肉とかを切っていく。


「へぇっアカシアさんって料理が出来るんですね」

「ん?まぁ素人に毛が生えたレベルだけどな…」


姫さんから褒められた、けどこれから作ろうとしてるのは塩とかで味を間に合わせたスープ的な何かだ、調味料がなさ過ぎてこれが限界だ。


だから下手にハードルが上がるとマジで困るんですけど。


「フリーネ、私と一緒にテントの設置をするわよ」

「えぇっ!?料理はどうするの!?」

「どうせ見てるだけでしょ!ほらっさっさと動く」

「あぁ~~~ん」


フリーネがレイナに引きずられていく、しっかり働けよ。

そして黒いのと金ピカは腕を組んでるだけで何かを手伝う気配がない。ふざけんなや。


「おいっ金ピカ!黒すけ!何もやる事ないなら料理を手つだ……いやっ野営の為に燃える枝とか集めてこいよ」


「なっこの男、私達にまで何かをさせようと言うのか!?」

「いや、それよりも今料理を手伝わせ様として諦めたな貴様!許さん!」


なんだよ、だってどう見てもお前ら料理スキルとかなさそうじゃねぇかよ……。


さてと、さっさと一品目を作って………。


「相棒!私もメイドとして料理手伝ってやってもいいぞ?」

「…………………」


結構だ!。












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