第17話『臨時パーティー結成』
取り敢えず話をして、あのバカメイドが戻るまで時間を持たせよう。
「暫くまってくれ、今あのバカメイドが何かしら代わりの獲物を仕留めてくるって言ってたから」
「……メイドって、貴方は貴族か何かなのかしら?」
「違う違う。あの格好をしてるからメイドって言ったけどあれは本人の趣味で見た目だけのパチもんメイドだから炊事料理も家事も出来ないさ」
完全に決めつけだがおそらく間違いないさ、ユーレシアにその手の能力があるイメージが一切わかないんだよ。
「……それでおたくらの方は、普通に考えて冒険者としてモンスター退治でもして日銭稼ぎって所だろ?」
「……まぁその通りだけど……」
「私達まだまだ冒険者としては駆け出しだから日銭を稼ぐのが精一杯なんですよぉ~パーティーメンバーも揃ってませんし」
なんと言うか、実にロープレゲー的な会話だ。
パーティーメンバーとかモンスター退治とかさ。
『……マスター、そろそろ動かして欲しいのですが』
未だに地面に突き刺さったままのプレアである。
「……お前なぁ、1回次元収納で退場してからまた現れればいいだろ?」
『……確かにその通りですね。流石はマスターです』
「ねぇっまだ誰かの声が聞こえるわよ?」
「そうねぇそれも女性の……あの黒いのが消えたわ?」
「………そして普通にまた現れたわね」
「その車もうちのパーティーメンバーみたいなもんさ、名前はプレアだ。よろしくな」
『………よろしく』
「「!?」」
それから女冒険者がプレアに近づいて騒がしくなった。やはりこの世界では車はないのだろうな。
少しすると二人がいきなり静かになった。
「………ねぇフリーネ。あの黄金の鎧ってどこかで見たことないかしら?」
「う~ん、ロープでグルグル巻きにされてるわね?私の知り合いには見えないわよ?」
「いやっそうじゃなくてっ!」
………あっそういやあの簀巻きもほったらかしだったわ、それを見つけられた。
「そいつは俺とあのメイドに喧嘩を売ってきたから返り討ちにしてそこに詰め込んでんのさ、何かに使えるかと思って連れてきたんだが何の役にも立ちそうにもないから失敗だったわ」
「「…………………………」」
ん?何故か女子二人からの視線が急に冷たい物になったぞ?。
「………ん?わっ私は生きてるのか?墜落と言う言葉を聞いてから先の記憶が……」
「お前は墜落の時に速攻で気絶しただろうが、この見せかけ騎士が」
「なっ!?き、貴様ー!よくも私を簀巻きにしてくれたな!仮にも乙女になんと言う真似を……この外道がっ!早く縄を解け!」
おっ乙女~~~(笑)。
「てめぇふざけんなよコラッ!さっきいきなり殴り飛ばして来たのはお前だろうが!縄を解くわけがねぇだろうがこの金ぴかがぁっ!」
「それもこれも貴様が私の愛剣……じゃない!我が国の城にいきなり侵入したのが原因だろう!悪いのは貴様らだ!そして私の剣を返せ!」
騎士のクセにやたらと自身の欲望に忠実なヤツだな、俺がくっころをして欲しい騎士はこんな感じのヤツじゃない。
するとユーレシアのヤツが帰ってきた様だ。
「おーーい、今帰ったぞー」
「おうっ戻ったかユーレ………あ?」
ズシンッズシンッズシンッ。
実に重い足音が響く。
何故か?それはユーレシアが笑顔で担いでいるモンスターがかなり大きいからじゃないか?。
全長は軽く十五メートルはある巨大なイノシシに見えなくもない巨大モンスターを軽々と片手で背負って此方に来ている。
「あっあれは、タイラントボアッ!?この先の樹海のボスモンスターじゃない……」
「はぁ~あのメイドさんとんでもなく強いんですねぇ~」
「ばっバカな……あのクラスのモンスターを武器もなしで?いやっ……奴ほどの魔法の使い手なら或いは……」
「ん?フフンッ私の実力はこんなものではないぞ?ホレッ駄目にしたモンスターの代わりだ。持って行くといい」
ユーレシアはそう言うとモンスターをドスンって地面に置く。
ほうっ本当にあの女冒険者達の為に捕ってきたのか、少しは良心ってのがあったようで感心した。
……けどそのビッグなイノシシをこの子達がどうやって運ぶんだよ。
俺の心配を他所に女冒険者達はイノシシに近づいて観察とかし出した。
「……凄い、血抜きの処理もだけど、殆ど傷らしい傷もなく仕留めてる、一体どうやって?」
「多分魔法かな?けどっ私程度の魔導師じゃあどんな魔法かとかさっぱりですねぇ」
なるほど、そんな見方もあるのか。
いつもこのメイドはチートばかりだから感覚がマヒしていた俺だ、もうコイツのする事に一々ビックリしてると気が持たないんだよ。
「けどっこれだけの大物を貰うなんて出来ませんよ、そもそも私達の実力では間違いなく仕留められない相手ですし……」
「そうか?なら私達が倒した事にして、そのイノシシの素材なりを好きなだけ持って行くといい。そのイノシシの革は鎧やブーツに、牙は武器にアクセサリーにと多岐に使えるから売るだけでも金にはなるぞ!」
「……わっ分かりました、それならお言葉に甘えさせていただきます」
「あっそれとこのイノシシを運ぶ事は出来るか?なんなら街まで運んでもいいぞ?それともまだモンスターを狩るのを続けるか?」
なっ!?あのユーレシアが他人に気づかいを見せてるだとっ!?スッゴいキモい。
「いっいえ、私達はもう冒険者の街に戻ろうと思います…」
「あっそれなら街につくまで臨時のパーティーを組みませんか?皆さんも街に向かうつもり何でしょう?」
「だっそうだが、どうする相棒?」
ユーレシアは俺に決める様に催促する。
俺が答えを出そうとすると、横から簀巻きが口を挟む。
「何がパーティーだ!そもそも貴様らは冒険者じゃな」
メイドが簀巻きの顔を踏みつけて、余計な事を喋るのを阻止する。
「むっ!むぐぐぐぐっ!むぐむっ!」
「………少し静かにするといい」
「あっあの、二人は仲が悪いんですか?」
「まぁな~」
「そっそれとあの黄金の鎧の再現度は凄いですね、あの黄金の騎士のファンの方ですか?」
「………………」
どうやら簀巻きを本人とは思えなかった様だ。
あの金ぴかは彼女達の前ではずっと簀巻きとしてウネウネしているからな、さっきからの言葉も冗談か何かだと判断された可能性が高い。
なんて哀れなんだ簀巻き騎士。
「……まぁ似たようなもんだな、それとさっきの臨時パーティーの話だが受けてもいいか?」
「了承してくれるんですか!?ありがとうございます」
「偶然に会うのも多少の縁ってな、よろしく頼むわ、俺はあ……アカシアだ」
名前、やっぱもうちょっと考えた方が良かったかな。
「決まった様だな相棒。私はユーレシア、史上最強のメイドでありアカシアの相棒だ!よっろしくぅ~だな!」
そのよろしくの言い方辞めろ。
「私はフリーネ。魔導師であり史上最強ののんびり屋さんとよく言われるわぁ~」
史上最強で張り合うなよ。
『私はプレアです、マスターの移動のお供であり史上最強の愛車でもあります。よろしくお願いいたします』
コイツの史上最強は確かにだわ、喋るし空飛ぶしな。落ちたけど。
みんな実に個性的な挨拶をしやがるな、おかげで俺の最初の挨拶の無個性が変に目立つわ。
「……フフッ楽しい人達ですね。私はレイナ、クラスは剣士よ前衛なら任せて下さい」
レイナ?なんか日本っぽいな、もしかしてラノベでおなじみの主人公以外の転移者的な?。
………俺がモブ転移者枠の可能性の方が高いな。
「それじゃあ自己紹介は済んだな?それじゃあプレアに乗り込め、プレア、空は無理でも地上なら走れるか?」
『はい、問題ありません』
「フリーネとレイナ。取り敢えず年長者で俺が臨時パーティーのリーダーをさせてもらってもいいか?」
「「分かりました」」
「……まぁ大した指示とか無理だろうから戦闘とかは自己判断を優先してくれていいからな、それと……」
「相棒相棒!私には何かないのか?」
「………お前はそのイノシシを運ぶんだから走ってプレアを追ってこい」
「……………」
『それでは置いていかない様にゆっくり走ってあげましょうか?メイドさん?』
………ユーレシアとプレアが無言で向かい合っている、黙ると怖いから何か言えよ。
「……おいっいつまで私をこんな状態のまま放置するつもりだ?」
「……………あ」
簀巻きの事をすっかり忘れてた。
女騎士からの小言の様な言葉がウザい。
そんなこんなで臨時パーティーを結成する事になった俺達だ。
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