世界を越えたその先は。
どらいあい
第1話『社畜の覚悟』
俺の名前は
しかし俺はその社畜生活への終止符を打つことに決めた。
これ以上俺の人生を安月給、タダ残業、嫌いな上司との飲み会&説教に費やせるかって話だ!。
仕事自体は嫌いじゃないから長年我慢してきたが精神を削る言葉の暴力と物理的な暴力のコンボを長年無抵抗で受けていた俺だが、遂に我慢の限界を迎えた。
既に懐には辞表を忍ばせている、しかし俺はこの辞表を会社に叩き付けるだけで終わらせる気はない。
無論、大嫌いな上司に暴力を持って今までのオトシマエをつけさせたいのが本音だ。
しかしあのカスを殴ってブタ箱送りとかも納得がいかない。
本当は張り倒してやりたいが、そこは社会人としてもう少し大人な対応をすると決めている。
「会社の前にある自販機で熱々のコーヒーを買って、あの上司の頭にぶっかけてやる…」
それが長年苦しめられた俺の復讐である。
どのみち犯罪で捕まるだろうが暴力を振るうと下手すると殺してしまいかねない、それくらい俺はあの男を憎んでいるからな。
絶対に殺すことのない方法で一発ひどい目に会わせたいと考えた苦肉の策だ。
……ついでにあの糞上司の罵詈雑言の音声データと他の社員や俺を殴り付ける動画を友人の田中君に頼んで今日の昼にネットの世界にばらまいてくれる様に頼んでいるのでブラック企業にはどのみち地獄を見てもらおう。
自業自得だから同情はしない、数年掛けて溜め込んだ膨大な犯罪の証拠を世間様にばらまいてやるんだ。頼んだぜ田中君!。
俺は車を走らせながら会社に向かう、見えてきたトンネルをくぐり抜ければ会社は目の前であった。
しかしトンネルを抜けた先には、会社がなかった。
「………………は?何だよこれ、おかしいぞ?なにも、何もないじゃないか!?」
そうっトンネルを抜けた先には何もなかった。
空も道路も街も何もなかったのだ。
あるのはただ、真っ白な、何もない空間だけである。
周囲の全てが白い世界であった。
後ろ見る、抜けた筈のトンネルすらなかった。
軽く混乱しかけた、咄嗟に思考を切り替える。
「真っ白な何もない空間ってラノベとかで異世界に転生する時に神様と邂逅する場所じゃん、俺は異世界にでも行くのか?」
勿論冗談だ、現実にそんなファンタジーな話が起きるとは考えていない。
しかしこのあり得ない光景にパニックのなりそうになる頭を何とか平静に保つためにした誠意一杯の努力である。
車を止める、地面も道路もないくせに普通に止まった。
そして足をおくと普通に立てた、なんだこれ。
「霧?っいや霧でこんな光景になるのはあり得ないだろ、本当にどうなってんだよこれ」
回りを見てみるが全てが真っ白な世界ではどこを見ても同じ景色であった。
まさかこのままどこにも行けずに餓死したりしてしまうのか?そんな考えが俺の頭に浮かんだ。
その時である。俺の耳に聞き慣れない女性の声が聞こえた。
『これよりチュートリアルを始めます、これよりチュートリアルを始めます』
「…………は?チュートリアル?何を言って」
俺の疑問等無視する様に声は説明だけをする。
『勝利条件はエネミー、一体の討伐。敗北条件は佐藤圭吾の死亡。エネミーを召喚します』
「は?エネミー?俺の死亡が敗北条件?おいっ!冗談もいい加減に……」
その時、何かが地面を這うような音が聞こえた。
ズチャッとかジェリッとかそんな薄気味悪い感じの音だ。
音のする方を見る………見なければ良かった。
そこには鉄バットを持ったボロボロの人間が、虚ろな眼を俺に向けていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます