5. (終)

「パチィン!」

「戦闘準備完了!」

鏡の前に立ち横腹を平手で打つと、美しい波紋が身体全体に広がっていった。

銀ネコは 100kg を超えた戦士の状態を確認している。

「すばらしい。昨日よりもエネルギー充填量が上がっている。

これならズィーガッガを2体処理できるかもしれない」

「え?

 いや、確実に1体ずつ処理していくのがいいと思うな、ボクは」

一度に2体減らしてしまうと、ラーメン1回分損するのだ。それだけは避けたい。



「では、本日は東の探索地点へ向かおう」

「駅の方向だな。了解」

時計は深夜0時を回っていた。手からビームが出るところはあまり人に見られるとやっかいなのだ。





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「うぅ、重い・・・」

昨日の夜は月面を軽やかにスキップできた身体が、今は鉛でもしょっているかのように重かった。

「ふーっ、ちょっと座っていいかな」

200mほど歩いたところで公園のベンチに座り込み、汗をぬぐった。

一方銀ネコは少し離れたところに浮かび目を閉じている。

「どうした? 」

「音波を測定している。

 ズィーガッガの伝搬体は地球の生物のDNAを元に作られたクローンだ。

 5体の特徴は全く同じと考えられる。

 そして昨日の記録に伝搬体の歩行音が残っていた。同じ波形が観測されたら、近くにいるということだ」

今さらながらに異星人のテクノロジーには感心する。マサルの腹が出たり引っ込んだりするのも彼らの技術があってのことだ。


「じゃあ、またちょっと歩いて音を拾えばいいな。休み休み行こう」

マサルも昼間の暴飲暴食が過ぎたものだと実感し始めていた。

明日は肉メインで攻める予定だったが、量は少し控えるべきか?

マサルが真顔でハンバーグのグラム数を検討しているとき、銀ネコは誰かと話をしていた。

「はい、、

 そうですか、なるほど」

「どうした?」

「本部から連絡が入った。

 あ、はい。

 それはよかった。情報感謝します」


銀ネコは通話が終わったらしく、マサルの方に向きを変えた。

「最近、地球上で新型のウィルスが拡散しているそうだ」

「え? あ、まあ そうだね」

「ズィーガッガの伝搬体は地球の生物がベースになっていて、そのウィルスの影響を受けてしまうらしい」

「ん? へぇ、そうなのか」

「伝搬体を人間に接触させられないため、彼らの計画は失敗に終わったようだ」

「んー

 んん・・・?

 つまり?」

「ズィーガッガは既に母星への帰還を始めたようだ。

 我々の勝利だよ。

 キミの任務も完了だ!」

「完了って・・・」

「キミの活躍は素晴らしかった。感謝するよ」

「いや、感謝はいいけど、」


マサルは腹のぜい肉をつまんでゆらしながら続けた。

「こいつはどうなるの?」

「ああ、体型も元通りか、それ以上になったな。よかった」

「いやいや、よくないだろっ!

 ちょっと! ビームはどうすんのさっ?」

「もう必要なくなった。その右腕のデバイスも元に戻そう」

「いやーーーー!! ダメダメダメっ!

 一発撃たせて! 消す前に一発!!」

「それは標的を決めないと撃てない」

「標的!?

 んーー、じゃ、ほら、アレ

 転売屋とか皆殺しにするから!」

「人間同士の紛争には使えない。契約のときに説明・・」


「あーー!!

 サイヤ人でも何でもいいから、地球に来てくれーーーーっ!!」



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ボクは光の戦士、太ります 鈴木KAZ @kazsuz

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