第16話 比翼連理

 ガールードカーディガンをコインロッカーに仕舞い込んだ麻璃亜は、蒼白い顔を紅潮させながら全てのアトラクションを楽しんだ。


 最後は観覧車。

 向かい合わせに座り、


「駄犬」

「ん?」

「これから儀式を行うわ。簡易バージョンだけど、主従の契りを結ぶ大切な儀式」

「応」


 だから、


「目を閉じて、力を抜いて」


 言われるまま、そうした。

 次の瞬間。

 唇に何かが触れた。

 鉄の、血の味。



 目を開くと間近に、麻璃亜の顔。



「すぐ目を開くなんて、ムードの無い犬ね」

「お前、血……」


 麻璃亜は唇を噛み切っていた。


「私の血で繋がったから、鼻が良く利くようになるわ。この後私は間違いなくさらわれる。


 血を舐めながら、


「きちんと迎えに来るのよ、駄犬」

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