第15話 眠れない夜

寝れないから、少し外の景色でも見ようとグレンさんに気を使わせないように静かにベットから降りる。今日は雲一つ無かった。その景色を見ると悲しくなってきた。なんで呼ばれたのが私なんだろう、知らない人に凄い目で見られて…でもこの世界に頼れる人なんかいなくて。苦しい、苦しい。泣きながら神様に訴えてもきっと日本には戻してくれないだろう。頭の中では、帰れない事分かってるのにな涙が止まらない。そんな時静かにドアがノックされる。


「ツキノ様、大丈夫ですか?」

「は、はい!大丈夫ですよ。」

「無理して嘘をつかなくていいんですよ…入ってもいいですか?」

「ど、どうぞ。」


うっかり、どうぞなんて言ってしまった。心が弱ってるからなのかどうしてかは分からない。ガチャっと音がしてグレンさんが入ってくる。


「何かありましたか…?泣いているようでしたが」


泣いてるのバレてしまった、でもお構いなしに涙は止まらない。耐えていたことが少しばかり溢れてしまったようだった、迷惑にならないように声を押し殺して泣く。そんな私をグレンさんは何も聞かず隣に来てくれて頭を撫でてくれた。それは不思議と安心するそして何故か懐かしい気もした。


「ちょっと、少し疲れちゃったみたいです…」


そう言って、また軽い嘘をついた。日本に居た時からだった、不安な事や何かあるとすぐ泣いてしまう。そんな自分が大嫌いだった。この国エルメルトでは、絶対この姿を見せないように頑張ってたのにバレてしまった。


「ツキノ様は、頑張っていますよ。」

「え?そんなことないです…」

「この国に来てから一番近くにいる私が言っているんですよ?」


一番近く…確かにそうだ、レーナさん・クリスタさん・ライナさん・クラウスさんより近くにいてくれたのはグレンさんだった。そんなことを思うとなんだか心が軽くなった気がする。


「そうですね!ありがとうございます。」

「ならよかったです、もう一回お休みになってください。ツキノ様がお休みになるまでお部屋の中にいますから」

「それじゃあ、おやすみなさい」


再びベットに戻り布団に潜る。今度は布団に入った瞬間眠気が来て眠ることが出来た…



◇◆◇



少し眠いけど、寝れたからいいや。眩しい日の光で目を細めながらベットから降りる。


「おはようございます、ツキノ様」

「クリスタさん、おはようございます。」

「今、レーナが朝食を用意しています。その間に着替えましょうか」


言われた通りに着替えた。どうもエルメルトの服の雰囲気は私には合わないみたいだった。


「ツキノ様、朝食の準備が出来ました。」

「あ、ありがとうございます。今行きます」


用意してくれた朝食を食べ、思い切って気になることを聞いてみた。これは触れていいのか危ういが聞いてみよう…


「今、聖女様ってどうなんですか…?」


そう言った瞬間少し空気が重くなった、やってしまった聞いてはいけなかった。あまりいいとは言えないかもしれないと思ったらグレンさんが口を開いた。


「聖女様は、何もしていません…」

「え、それってどういうことですか?」


聞き返すと怒り狂ったみたいにクリスタさんが話した。


「あの聖女様は、王子に欲しいものをねだりその分この国の為に頑張ってくれるかと思いきや魔法の勉強もしず王家にばっかり媚びを売っているのですよ!!」

「だから、今までツキノ様が会った方はツキノ様に驚いたのです。聖女様の性格と違っていて」


でも、そんな風には見えなかった。私の事を気遣ってくれた、優しい人だなと思ったのが第一印象だった。


「なんか、あったとかではなくて?」

「私たちもそう思いたかったですが、召喚された日かららしいです。」

「そのせいで、聖女様と会ってしまった時酷いことを聞かせてしまい申し訳ございませんでした。」


あ~確かに言われたなぁ「お前が、一緒に召喚された年増の女か。ははっ、笑えるな。早く城から立ち去れ」だっけ年増って言われたけどまだ二十代ですけど…


「謝らないでください。私傷ついてないですし、ね?」


そういうとほっとした顔をした。って今日何しよう何も考えてない…部屋にいるのもな~嫌だし適度に外に行きたいしなんか何かないかな


「今日、やることがないんですけど…なにかありますかね?」

「ツキノ様、今日は王妃様から会いに来るように伝えろと言われまして」

「王妃様?!え、聖女じゃないんですけど…なにかしちゃったかな」

「大丈夫ですよ、ただ単に話してみたいと言うことらしいですので」

「ちなみに、王妃様は聖女様よりツキノ様側ですので…安心してください」


王妃様か、確かに顔合わせしてないかも…召喚の時は王様しか来なかったしきっと綺麗な人なんだろうな~


「分かりました、会いに行きます」

「ツキノ様!準備しましょう!王妃様に会いに行くんですから」


クリスタさんもレーナさんも嬉しそうにして準備をしようとしていた。私は、礼儀をしっかりしなきゃねと覚悟を決めた。





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