第14話 町でのちょっとした事件

無事、会うことなく部屋に着くことが出来た。あ~今日は色々して疲れたなぁ、そう思いながらベットに飛び込む。まだ日が落ちるまで時間があるなぁ~どうしようかな?ベット端に座りながら考えるとグレンさんがいい提案をしてくれた。


「ツキノ様、やる事がないようでしたら町に行きませんか?」

「町、ですか?」

「はい、お城を出てすぐあるんです。散歩がてらどうでしょうか?」


町か、考えてなかった…せっかくグレンさんが提案してくれたし気になるから行こうかな。


「行きたいです。案内してもらえますか?」

「勿論です。」


それから、全員町に行く為にお城から来たものとバレないように格好を変えて廊下を歩く。



◇◆◇



この世界に来てから初めて来る外だ。お城にいた時には全く声が聞こえなかったが、物凄く賑わっている。日本で言う屋台がいくつもずっと続いている景色が広がっている。


「凄い、人がいっぱいですね。」


お城にずっといたからだろうか、人がたくさんいるのが新鮮。


「ツキノ様、せっかくだし何か食べますか?」

「いいですね!でも、私この国のお金持ってない…」

「大丈夫ですよ。私が買いますので」

「そういう事じゃないんですよ」


そんな事させられない!迷惑ばかりかけているのにお金を出させるなんて…


「それでは、髪を切ってくださったお礼として」

「うぅ…分かりました。お言葉に甘えてお願いします」

「何か気になる食べ物はありますか?それを買ってまいります。」

「うーん、特にはわからないのでオススメのものを」

「それではちょっと買ってきますのでここで待っててください」


そう言われ、レーナさんたちなどと話ながら待っていると四人組の男の人がこっちに近づいてきていた。気のせいだと思いながら会話を続けていると


「ツキノ様に食べて頂きたい、私オススメの食べ物があるので買ってきます。」


そう言って屋台に向かって行った。その間にさっきの男の人たちと肩がぶつかってしまった。


「おい、何ぶつかってるんだよ?!って女じゃねぇーか。」

「す、すみません」


目を付けられてしまった。今、ここには誰もいない。不味い、凄く不味い…


「よく見れば、いい女だな。」


気持ち悪い手がこっちに伸びてくる。その手は私の顔に触れた。その瞬間ぞわっと鳥肌がたつ。怖い、誰か助けて…声に出せず怯えるしかできない。いつの間にか左手首を掴まれていて無理やり連れて行こうと引っ張ってくる。


「やだ…やめてください。」

「あ?何言ってんだ、聞こえねーよ。」

「おい、ツキノ様に何をしている。その手を離せ。」


後ろから聞こえた声はトーンを落とした低い声のグレンさんだった。グレンさんはすぐ私の左手首を掴んでいる手を捻り上げた。掴む力が弱くなった瞬間、私は左手を抜きグレンさんの後ろに隠れる。


「てめぇ、兄貴に何してやがる」


と三人同時にグレンさんに殴りかかってきた。でも、心配する必要はなく全て避けながら蹴りをいれていた。流石、騎士様というべきか凄くカッコいい。なかなかにぼこぼこにされた四人組は日本でお決まりの事を言って走り去っていった。


「くそ、覚えてろよー!」

「大丈夫ですか?ツキノ様、お怪我は…」

「ないですよ!助けてくれてありがとうございます。」


そう言いながら手首を見せる。手首は、問題なかったが手が震えていた。それを見逃さずグレンさんは私を安心させるように手を握ってくれた。


「ありがとうございます。グレンさん、もう大丈夫ですよ?」


何故か、少し寂しそうに手を離してくれた。すると、屋台に買いに行っていたレーナさんたちが帰ってきた。


「すみません、他にオススメのものを見つけちゃいましてってどうかしましたか?」

「ううん、なんでもないですよ?食べましょう!」

「後で、説教ですからね?」


それから、近くの椅子に座ってグレンさんとレーナさんたちが買ってきたものを食べてお城に戻った。もう夕方で日が落ちてきている。今日は、少し楽しかったかも。ちなみにレーナさんたちは部屋の外でグレンさんに説教されている。しばらくすると、レーナさんたちが戻ってきた。


「ツキノ様、一人にしてしまって申し訳ございませんでした。」

「そ、そんな謝らないでください。私は大丈夫でしたし」


なにか、話を逸らせる話題…そうだ!


「レーナさん、お茶入れてもらえますか?実は、クッキーがまだ残っていて。」

「任せてください!」


元気が戻ったみたいだ、よかった。私の不注意みたいなことで責任を感じて欲しくないからな…


「そういえば、グレンさん。」

「なんでしょう?」

「ルードさんに、今度いつ空いてるか聞いてもらえませんか?」

「いいですけど、どうか致しましたか?」

「お礼にと言われた髪を切る件で…」

「あぁ、そのことですね。」

「魔法師団にお邪魔して切った方がいいか、来てもらうかも聞いてもらえますか?」

「分かりました。」


簡潔に話を済ませた、いいタイミングでレーナさん戻ってきた。紅茶のいい香りがする~落ち着くなぁ。テーブルに用意してもらい、クッキーを取り出す。


「聞くの忘れていたんですけど、クッキー口に合いましたか?あ、皆さんもどうぞ~」

「ミーティアにも似たようなものはあるんですが、ツキノ様のように軽い感じではなくて…」

「そうなんですよ、何枚も食べれなくて。」


似たようなお菓子はあるんだ、それじゃあ今度はエルメルトにないようなものを作りたいなぁ。勿論、お菓子だけじゃなくてご飯系もね。今日は、お菓子を食べすぎてしまったから夕食は量を少し減らしてもらおう。


「ツキノ様、湯あみの準備が出来ました。」

「ありがとうございます、今行きます。」


お風呂にさっぱりした、ご飯も美味しかった。今日も無事?一日が終わった。さぁ、布団に入ろう。入ったはいいが寝れないなぁ…やっぱり町でのあれかな?また手が震えてきた。ここは安全で大丈夫なのにな、今日はグレンさんが部屋の前にいてくれていると思ってもダメみたいだった

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