第18話 仲良し夫婦

 ◇◇◇


「も、もう!ロルフもさっきからそんなことばっかり言ってるから、父さんたちが困ってるじゃない」


 リリアがほっぺを赤くしながら膨れると、ロルフは鮮やかに微笑んだ。


「悪い。だが、二人にはぜひとも俺たちのことを祝福して貰いたいからな。それとも、俺と結婚するのは嫌か?」


「そ、そんなことないけど……」


 ごにょごにょと口ごもるリリアを蕩けるような目で見つめるロルフ。二人の間に漂う甘い空気に、ダンとマーサはすでに白目を剥いていた。


「か、母さん?都会の男ってえのはみんなああなのか?」


「馬鹿言っちゃいけないよ。あんな色男がそこらへんにいるわけないだろ?」


「なんかリリアが女みたいな顔してんだが、俺の気のせいじゃねえよなっ!?」


「ふう。リリアも私に似て面食いだからね……」


「んん?うん、そうか?そうだな。リリアは母さんに似て面食いだからな」


 マーサの言葉に途端に気をよくするダン。単純なところが父の可愛いところだとリリアは密かに思っている。


「え、ええーと、ロルフさんだったかい。結婚って言ってもリリアはまだ結婚できるような年じゃないんだけどね」


 マーサの言葉にロルフは大きく頷く。


「もちろんです。リリアさんが成人するのを待ってから、すぐに結婚したいと考えています」


 ロルフの言葉に顔を見合わせるダンたち。


「それはまあ、二人の気持ちが固まってるなら文句は言わないけど、生活のあてはあるのかい?リリアは冒険者としてちっとは稼げるようになったのかい?」


「私はそのう……」


 明後日の方向を見るリリアにため息をつくマーサ。


「そうだろうと思ったよ。テイマーになるなんて出て行ったけど、あんたみたいな優しい子が魔物とはいえ仲間が戦って傷つくのを黙って見ていられるわけないだろう?どうせ続かないと思ってたんだ」


「う、うん。実はなりたかったテイマーにはなれなかったの」


 リリアの言葉にダンもうんうんと大きく首を縦に振る。


「昔猫の魔物を拾っちまうぐらいだからなあ。まあ、諦めるんだな。あんたは?冒険者としてやっていけてんのか?」


 ダンの言葉にぎくりとするリリア。二人にはまだロルフがそのであることは言っていないのだ。


「はい。今俺はBランク冒険者として活動しています」


「Bランク冒険者だって!?」


 ロルフの言葉に驚くダン。Bランク冒険者と言えば、数少ない上位冒険者だ。当然収入もけた違いに多い。


「や、やるなあ兄ちゃん」


「今はリリアさんと一緒に過ごすために昇級試験を受けていませんが、Aランク相当の資格はすでに持っています。万が一冒険者をやめたとしても、十分な蓄えもあります。リリアさんに苦労はさせません」


 きっぱりと言い切るロルフにマーサの胸がときめいた。


「苦労はかけない!女として一度は言われてみたいセリフだねえ」


「く、苦労かけちまってすまねえな……」


 マーサの言葉にすねるダン。


「馬鹿だね。苦労なんて思ったことないよ」


「母さん!」


 なんだかんだ仲良しの二人なのだった。

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