第6話 秘密の水曜日





「みなちゃん、疲れてるなら少し寝てていいよ」

「疲れてないから大丈夫」


未羽君と電車で隣の席に座り、肩が当たったり、未羽君をめちゃくちゃ近くで感じられてドキドキして黙って下を向いていた私を見て未羽君は私が疲れていると勘違いした未羽君は私に優しく声をかけてくれるがそうじゃないから……


「そっか…えっと、今日は学校どうだった?」

「普段通り……」

「そっか…」

「未羽君は今日大学どんな感じだったの?」

「今日はね。午前中授業受けて、午後はサークルの部室でゆき先輩と作業してたんだ」

「あっそう…」


お姉ちゃんの名前を出す時になんていうか…すごくいい表情をした未羽君に少し腹が立つ。お姉ちゃんなんかより私を見てよ。許されるならそう言いたい。けど、言えるわけなかった。


お姉ちゃんが羨ましい。私が大好きな未羽君に好意を持たれているお姉ちゃんが本当に羨ましかった。


「未羽君ってさ、お姉ちゃんのこと好きなんだよね?」

「うん。そうだよ」

「お姉ちゃんのどこが好きなの?」

「えー、恥ずかしいから内緒」

「いーじゃん。教えてよ。お姉ちゃんには内緒にするからぁ」


照れる未羽君を見てかわいい。と言う気持ちとお姉ちゃんを羨ましく思う気持ちが込み上がってくる。


「うーん。かわいいとことか、明るいところとか、ちょっとぬけててバカなところとかかな…」

「未羽君はお姉ちゃんのことバカって思ってるんだぁ」

「……わ、悪い意味のバカではないからね」


しまった。と言うような表情をして慌てて私に弁明する未羽君かわいい。バカ…というよりかはお姉ちゃんの天然みたいなところがいいのだろう。正直、あれのどこがいいのか…と思ってしまう。お姉ちゃんの天然な性格はたしかに、ちょっと関わるくらいならバカでいいなぁ。って思うのかもしれないが、一緒に生活してあの性格に振り回されるようになったらたまったもんじゃないぞ……


「はいはい。お姉ちゃんに未羽君がバカって言ってたって報告しないとなぁ」

「お願い、そんなことされたらもう家庭教師に行けなくなるからやめて…」

「そ、それは嫌!」


慌てる私を見て未羽君はニヤニヤした表情をする。はめられた……


「未羽君の意地悪……」

「えー?何がぁ?」

「未羽君のバカ」

「ひどいなぁ…」


うー。恥ずかしい。未羽君にはめられてあんなに慌てて…あーもう。本当に嫌だ。恥ずかしすぎて穴があったら入りたい。


「未羽君が来てくれなくなったら、私、本当に生きていけないからね…」

「じゃあ、お姉ちゃんには内緒ね」

「わかった」


元々お姉ちゃんに言うつもりなんてない。今日、未羽君と話したことやすることは全て、私の中の思い出にするだけ…誰にも絶対に言わないし、誰にもこの幸せを知られたくないし、邪魔されたくない。


未羽君からは今日の出来事を誰かに言ったりしないだろう。だから、今日のデートは…私と未羽君だけの秘密……





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る