第5話 水曜日の約束





「まだ…来てないか……」


水曜日、学校が終わり、私は未羽君と待ち合わせをしていた駅に直行した。お母さんとお姉ちゃんには内緒でデート……お出かけをするので、学校終わりにそのまま遊びに行くことにした。


未羽君には一度家に帰った方がいいんじゃない?と言われたが、家に帰ってお母さんに捕まったりしたら面倒だし、未羽君と100%お出かけできるようにしたかったため強引に押しきった形だ。


「変なところないよね…」


私は駅のガラスに写る自分を見て身なりを整える。急いで来たため少し跳ねていた髪を整えて、高校では付けていなかったイヤリングをつけて、リップを軽く塗って、ちょっとあざとく髪にリボン付けて、急いで来たためだらしなく下がっていた黒色のハイソックスをしっかり伸ばしてブレザーの袖をちょっと引っ張って萌え袖を試してみたり、制服のスカートが少し短くなるように調整したり今、この場でできることは全部やった。


「よし!」


ガラスに写る私を見て私は気合いを入れるように呟く。未羽君、かわいいって言ってくれるかなぁ。


「準備できた?」

「え!?」


私が振り返ると未羽君が私の後ろに立っていた。制服姿の私とは違い普段、家庭教師の時のような私服だった。大学生っぽいファッションだけどイヤリングやピアスみたいなアクセサリは付けていなくて大人しい感じの雰囲気がファッションから伝わってきた。今日もかっこよくてかわいいわぁ。


「………………いつからそこにいた?」


未羽君に少し見惚れた後、私は現状を思い出して恐る恐る未羽君に尋ねる。どうか数秒前とかであってくれ……


「ごめん、髪の毛直してた時くらいから後ろにいた。いつ気づいてくれるかなって思ってたら全然気づいてくれなくて……」


髪の毛直してるところって一番最初じゃん!え、ちょっと…ほんと…やめてよ。めっちゃ恥ずかしいじゃん。私がめっちゃ気合い入れてたってバレバレじゃん。え、ほんとはずかしいんだけど……


「未羽君のばか…」

「え?あ、うん。なんかごめん」

「なんで私が怒ってるかわかってないでしょう」

「………ごめん」


未羽君のばか。女の子が好きな人のために身なり整えてるところなんて見ちゃだめだよ……


「そういえば、みなちゃんの制服姿初めて見たけどかわいいね。似合ってるよ」

「本当!?」


そういえば家庭教師の日はいつも私服に着替えてたから未羽君に制服姿見せたことなかった気がする。かわいい。かわいいかぁ。


「そんなにかわいいと高校でもモテるんじゃない?」

「そ、そんなことないよぅ」


さっきまでちょっと不機嫌だったのに少し褒められただけでこの有様だ。我ながら単純すぎる……


「ゆき先輩も同じ高校だよね?ゆき先輩もみなちゃんみたいにかわいかったんだろうなぁ」

「未羽君、ほんっとうにばか」


なんでさ、女の子とデート…お出かけしてる時に別の女を褒めるかなぁ?ほんと、乙女心わかってない。ばか。ばか。ばか。


「え、あ、その、ごめん」

「ばか。今日、私を満足させてくれなかったら許してあげないから」

「満足してもらえるように頑張るよ」


私は未羽君に連れられて駅に入る。私を満足させてくれようとしてるなら手くらい繋いでよ…と思いながら私はわざとらしく頬を膨らませて不満を表しながら未羽君の横を歩いていた。




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