ガミル

序章

 ヒトは皆、第二次性徴期を迎えると体にある変化が生じる。

先ずは肩甲骨の隙間からけたたましい音を鳴らしながら、骨のような白色の棒状の突起物が飛び出してくる。突起物が全て外に放出されると、先ほどまで白色だったそれの色が変化し、ある身体器官を構成していく。ある者は昆虫の、またある者は鳥類の様なそれへと変化する。

 そう翅だ。我々はこの変化を『羽化』と呼んだ。




 ***** ***** *****





 俺は今年で高校生になる。卯ノ月からは皇都でも屈指の有名校に通うのだ。自慢じゃないが、俺は人並に勉学はできると自負している。中学校では常に学年伍位以内の成績を維持していた。それは運動能力においても変わらない。小学校の時は毎年組別対抗走の殿を任されていたくらいだ。そんな俺が初めて頭を抱えるほどの壁にぶち当たっていた。

 

 「くそっ……なんで……ないんだよ……!」


 肩の下に手をやる。そこには本来あるはずのが存在していなかった。 


 「なんで生えてこないんだよ、とっくに定齢期は超えているはずだろ!」


 そう。もう十六歳はかにもなるのに俺はいまだ『翅』を持たない『不態全者サナギ』だったのだ。

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ガミル @gami-syo

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