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「昔は村落の山側に作ったという話ですが、今では豊かな低地に帰るという意味で下手に作るみたいです」
そういうチャンの答えを聞いた後、目が泳ぎ始めた村長に。
「最近、この村で出た死人は何人だ?」
「墓は神聖な場所だ!暴けば呪いを貰うぞ!」
誰もそんなこと聞いてねぇって。
リ・ウォンを残しチャン少尉とモレン曹長、その他五人ばかし連れ、村長の首根っこを掴んで引きずりつつ村の下手のはずれにある墓場へ向かう。
木の杭に囲まれ、森羊の角が飾られた土饅頭がいくつも並ぶ墓場につくと、明らかに新しいのが五つ六つ。
「大尉殿!当たりです!」
村長の頭に二十式を突き付けながら近づいて墓穴を覗くと、そこには棺桶の代わりに同盟の連中が使うファリクス文字が書かれた濃緑色の木箱。
村長の脚が震えだした。
「こっちもです、こりゃぁ、砲弾だ・・・・・・」
チャンの呼ぶ方へ行くと、同じような箱が埋められており、中には七十五
ここはチレジ村を襲った土匪の拠点の様だ。いきなり当たりを引いちまったぜ。まったく。
「村長さん、あんた嘘つきだね。攻めは負ってもらうよ。この村はもう」
東西の尾根から銃声沸き起こり、一発が連れて来た兵士の頭に命中し、後頭部が綺麗さっぱり吹っ飛ぶび、生っ白い脳味噌が辺りに散らばる。
タレム一等兵、先月、五つ年下の女房との間に、二人目の男の子が出来たって言ってたな。
そここに鉛玉が降り注ぐ中、反射的に土饅頭に身を隠し二十式を構えた。チャンもモレンも他の兵も手近な土饅頭を縦に弾がすっ飛んできた方向目掛けとりあえずぶっ放す。
村長だけが辺りの着弾を気にも留めず立ち尽くす。
脚が届く範囲だったので思い切り向う脛を蹴り上げブッ倒す。今死なれちゃ色々不味い。
無線の作法を欠いたリ・ウォンの呼び出しが、携帯無線機から弾丸が空気を切り裂く音に紛れ聞こえる。
『大尉!リ・ウォンです、東西の尾根から敵の攻撃、第二第三小隊が応戦してますがかなりの数の様です』
無線機に向かって怒鳴る。
「迫撃砲で二と三を援護しつつ、村の奴等を適当な小屋に閉じ込めろ、それから『流星』に応援要請!」
『了解!』の声を聞くか聞かぬかで土饅頭を飛び出し、放心状態の村長を引きずり来た道を叫びながら駆けた。
「牽制射撃をしながら村に戻るぞ!俺に続け!」
タレムよ、後でまた来るからな。
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