獅子島

影神

イケニエ

獅子島。




僕らの村はそう、呼ばれている。




人口はそれなりに多く皆が助け合い、


支え合って生活をしている。






そんな島にも古くからの言い伝えがあった。




伝承と呼ばれるものだろうか。






『コノシマ、獅子神様ノモノ。




スマワセテモラッテイルシマビト、


獅子神様ヲマツッタ。




スルト獅子神様、シマビトウケイレ護リ。






シカシアルヒ、シマビト獅子神様ニブレイヲハタラキ、


獅子神様ノイカリニフレタ。




獅子神様シマビトヲサライ、シマビト獅子神様ヲオソレタ。




ナヤンダシマビト獅子神様ニイケニエサシダシタ。






スルト獅子神様御許シニナラレタ。』






子供の頃から皆が教えられてるものだ。




それに沿うように、毎年祭りの際に、


獅子神様の"イケニエ"としての『罪人』が撰ばれる。




罪人は獅子神様の怒りに触れた者とし、


そいつを差し出す事によって厄を避け、


護ってもらうというものである。




年齢は9歳。


小学校4年生が該当される。




何故、9歳なのか、語呂的に苦しまない様に、


『9』と言う数字が使われているのか、


真相は分からないが、そう言われている。




獅子神様に無礼を働いたのが、


九と言う漢字が使われていたとも言われている。




なんとあやふやなものだ。




撰ばれた者の家は『罪人』となる子供を差し出し、


獅子神様の土地へと送られる。




祭りで決まった時から罪人とは話してはいけず、


"ナイモノ"として扱われる。




しかし、罪人に撰ばれた家は、大変光栄な事であり、


この島では大切にされ、"唾ツキ"と呼ばれる。




獅子神様に食われた者としてそう総称される。






子供からしてみれば、不安や恐怖でしかないだろう。




だが、仕方のない事なのだ。






島なので、食べ物は漁がメインで、


山の幸等も少量ではあるがとれる。




疫病等もなく、皆が子宝に恵まれる。






それら全てが獅子神様のおかげなのだ。






そんな島に産まれてしまった。






だが、俺は納得いかなかった。




皆が当たり前の様に"ナイモノ"とすることに。




それに、アイツが撰ばれちまったから、






幼なじみのかえで、俺、ちずるは仲が良かった。




いつも一緒に居た。




ちずるはお姉さんぶって、


少しうざいが頼りになる良いやつだ。




かえではおっちょこちょいで、


なんて、言うか、可愛い奴だ。




俺はかえでが好きだ。




でも、内緒だ。






9歳の祭りの歳その歳にかえでは撰ばれた。




俺はしばらく動けなかった。




その時かえでは笑顔で俺に笑いかけた。






"バイバイ"






俺は話せなかった。




仕来りがあったからだ。




すぐ、両親から離せられた。




決まった途端、皆がかえでから離れた。




いや、"ナイモノ"としたのだ。






今日、かえでは獅子神様の土地へと向かう。






祭りの次の日。


罪人が決まった次の日は島の人は外へ出てはいけない。




何故なら罪人と間違わられるからだ。






だから物静かだ。






獅子神様の土地は俺らが裏山と呼んでいる場所にある。




獅子神様の土地は祭りの奉納の際に、


島の偉い奴が行くぐらいで、


後は一切立ち入りが禁止されている。






そんな所にかえでを一人で送る訳にはいかない。






"なんせ俺はかえでが好きだから。"






俺は毛布にクッションを入れ、屋根から外へと出る。






獅子神様の土地へと向かって。




バレないように静かに移動する。






裏山へと入ると、長い階段があった。




階段は白く綺麗に整備されていた。




横には看板があり、こう書いてあった。






『これより先、獅子神様に撰ばれた者以外入るべからず。




禁忌を破る者、厄が訪れるだろう。』






俺には何て書いてあるかは分からなかった。


漢字が苦手だし。




緊張と、静寂に包まれると、足音が聞こえてきた。




俺は茂みに隠れると、かえでが歩いてきた。




かえでは泣いていた。






俺はかえでが可哀想になった。




だから脅かそうとして、勢い良く飛び出した。




「わあぁ!!」




「ひぃっ、、」




声にならないような叫びを出すと、かえでは尻餅をつく。




それと同時にかえではビックリしている。






「何で、いる、の??」




俺は照れながらもかえでの手を取る。




「いやぁ、かえで、寂しいかなって、さ?」




するとかえでは怒りながら言う。




「何で!駄目だよ!!ひーくんまで食べられちゃうよ!!!」




忘れた事を思いだしたかのように口を塞ぐ。




「いや、"ナイモノ"とするのは俺だから、、」




笑いながら思わず突っ込む。




「なーに、二人で仲良くしてるのよっ?」




どこからともなく、聞き慣れた声がする。




「ちずる!・ちーちゃん!」




思わずハモる。




「まーったく、あんたらは私もちゃんと誘いなさいよね?」




かえではちずるに抱き付くと、ちずるは優しく頭を撫でる。




「あんた、やってる事がどうゆうことか分かってるの??」




ちずるの鋭い視線に我に返り、唾を呑み込む。




「あぁ、お前だって、大丈夫なのかよ?」




ちずるの親父はめっちゃくそおっかない。


いかにもっつー雷親父って奴だ。




「私はいいのよ、こーゆー古臭いの嫌いなのよね




"イケニエ"とか馬鹿じゃないのっ??




んなどんだけ前の話ししてんのよ。




神様も随分と心が狭いんじゃないの??」




透かした様に話すちずるの声は震えていた。




「お前、震えてんじゃねえか笑」




底を突かれたちずるは顔を赤くしながら怒った。




「あんただってさっきから足震えてんじゃないのっ!!」




俺らは笑った。




震えを落ち着かせるように。






木々が風に揺られ、鼓動が幾らか落ち着いた頃、


ちずるが口を開いた。




「入ったら、戻れないのよ??」




俺はここぞとばかりにカッコつけた。




「はなっから覚悟決めてきてんだ。」






祭りの日の夜。




俺は布団の中で家族との時間を思い出していた。




母さんの唐揚げ、もっと食っとくんだったな、、




父さんとももっとゲームしとけば良かったな、、






同様にちずるも家族との別れを覚悟していたのであった。




おかあ泣くだろうな、、




とおちゃんには怒られそう、、




はぁ、何でこんなこと考えてんだろう。私。






「かえで、、ごめんね、」




私は二人の温かさを噛み締める。




もう2度と会うことはないのだと、、




「今までありがとう。サヨウナラ」






様々な思いが重なり合う中、3人は手を繋ぎ、階段を上がる。






階段は思ったよりも急で、けっこうあった。




蝉の鳴き声が暑さを引き立て、汗が伝う。




「なげえ、、」




苛立つようにちずるは返す。




「うるさい、しゃべるな。」




かえでが腰を降ろす。




「一回休憩しよっ、」




かえでの横顔が近くて、心臓が高鳴る。






涼み終えると、3人は歩き出す。




頂上に着く頃には蜩が鳴っていた。




標高が高いのか島が見渡せて、夕日が綺麗に見える。




海に反射した夕日は僕らの顔を染めた。






右側には社へと続く階段があり、


左側には舗装された道があり、


奥には屋敷みたいにでかい建物へと続く道があった。




「どっち?」




かえでは心配そうに言う。




ちずるは心配そうに




「左かな、?」




俺はちずるを後押した。




「ちずるが言うなら大丈夫だろ




腹へったし笑」




そう笑ってみせた。




3人は大きな屋敷のような建物へと足を運ぶと


玄関のチャイムを鳴らした。




「ピンポン、」




音が鳴り響く。




鼓動が早くなる。




「ドクドクドク」




足跡が聞こえ、俺はかえでを後ろにすると、


ちずるとアイコンタクトを取り、近くの箒を握り締めた。




「ガラガラガラ」




勢いよく扉が空くと、


獅子の被り物のようなものをしたのが出てきて


俺らの頭に頭突きをしてきた。




それは一瞬の事で何が起きたのか分からなかった。




放心して、突っ立ってると、被り物が外された。




「あれ、3人??」




中は男の人だった。




「もー、またやってるのー?」




奥からお姉さんが来て、被り物をした男の人の襟を掴むと、


まるでアニメのように引摺って行った。




奥から覗く女の子は俺と目が合うと何処かへ行ってしまった。






俺らは目を合わせる。正に不意を突かれた。




「あがりな、」




さっきのお姉さんが奥から話す。






「お邪魔します。」






こうして、俺らの罪人としての生活が始まった。






これからどうなるかって??






それはいつかのお楽しみ




























































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獅子島 影神 @kagegami

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