#13 友人との交渉

「それにしても、何もできなかったとはいえ、よくここが分かったな。」


テントへ戻るマリーと双子たちの背中を見送ると、コランはトムの方に顔を向けた。


「楽隊の一人に会ったんだ。コランの友人なんだが、彼を見なかったかと聞いたら、団員の少年と一緒に外に出て言ったって。」


誰に話しかけたのかは知らないが、聞かれたそいつは、こんなド派手なシャツ着た奴を怪しいとは思わなかったのだろうか。


「俺だったらテントの外をうろうろするセンスのないシャツを着た奴に話しかけられたら無視するけどな。」


「ちょっと冗談キツくね?っていうかこのシャツダサい?」


トムは真面目な顔をして聞き返してきた。


「とにかくお前はそこにいる殺人鬼を連れて一旦本部に戻れ。女性連続殺人事件の犯人は捕まったが今日のショーは中止だ。まだ団長を殺した犯人が分かっていない。そいつを取り調べ室でも牢獄でも、どこかしらにぶち込んだら応援を連れて戻ってこい。」


「言われなくてもそうするさ。犯人の方は目星がついてるのかい?探偵さん。」


「俺の本業は探偵じゃない。でも、もう目星はついている。ただ確認したいことは少しあるが。」


「そうだな、団長殺害の事件に関していえばハプニング的な案件だ。依頼には含まれていない。ただ俺たち警察が来る前に真犯人を見つけ出してくれたら追加報酬を考えてやらなくもない。」


トムは不適な笑みを浮かべて言った。


「自分の仕事を減らしたいだけだろう、それ。でも臨時ボーナスが出るのであれば悪くない話だ。」


だいぶ深いところまで関わってしまった以上、この事件から手を引くつもりはさらさらなかったが、報酬をくれると言うのはコランとしてはありがたい。


「交渉成立だな。」


トムは言うと、鞭で両手を縛られたジャックを連れて、少し離れたところに止めてあるポリスカーの方へと歩いていった。


日がだいぶ傾いてきた。懐中時計をポケットから取り出して時刻を確認する。まもなく15時といったところだ。トムが応援を引き連れてやって来るまで1時間ちょっと…いや、もっと早いかも知れない。その間に確実に犯人を特定する。

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