35嫁 元魔王アンリ 後世の評価

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 情報機密度E




 アンリ財団 沿革




 AC2035 惑星地球の第二大陸において、投資家 アンリ=ミルフォードにより、移民や貧困層への起業支援を目的に設立。(関連リンク 21世紀の惑星地球の社会情勢→当時、世界には国家が乱立しており、富や社会的資本の地域による偏在という課題を抱えていた。現在の地球連邦のような統一機関は存在せず、国際連合と呼ばれるいくつかの大国による寡頭制により非効率的な調整と再分配が行われていた)




 AC2050 当財団出資の科学研究機関 シルバー=フィッツ研究所が実用的な量子コンピューター『クラーク』の開発に成功。この技術的革新はAC2075の技術的特異点シンギュラリティの達成の主要因となる。シンギュラリティの口火を切り技術的優位に立った当財団は、以後数十年の間に、経済的・軍事的な資本を独占を進め、規模・内情共に世界一のコングロマリットを形成する。




 AC2150 当時の惑星地球における二大大国アメリカ合衆国と中華人民共和国の対立が激化。大戦が発生したため、当財団はただちに介入。その圧倒的な資本力を背景に直ちにこれを鎮める。


 この大戦を契機に、当財団は国際連合に変わる新たな統治機関『中央議会』の設立を提言し、現在の地球連邦の成立への道筋を作る。




AC2253 地球連邦の成立に伴い、国家間の紛争は消滅。当財団の軍事的研究に奪われていたリソースが宇宙進出に関する基礎研究に割かれるようになり、宇宙航海技術が飛躍的な進歩を遂げる。以後、膨張する地球の人口問題を解決するため、盛んに宇宙植民が行われる。




 当財団は、当初の設立理念に立ち戻り、『宇宙移民の経済的支援』を主眼とする慈善団体の性格を強める。




AC2750年 移動可能な宇宙の中に人類以外の知的生命体の不存在を確認。


        以後、新たなフロンティアを求め、平行宇宙の検索が活発になる。




AC3430年 平行宇宙の存在を確認。科学技術とは異なる精神文明的技術体系を持つ人類(俗称:魔法人)も同時に発見され、交流が開始される。当財団もそれに合わせ、『現宇宙・平行宇宙を問わず、全ての移民と貧困者を支援する』という名目の下、二つの宇宙の平和的相互交流に尽力する団体へと刷新される。








情報機密度A(情報閲覧には、精神レベルテストA級以上の資格が必要です)




 魔法人との接触の詳細に関する報告




 現在、魔法人と現宇宙人類との接触は、一般的にAC3430年が初とされているが、実はAC2000年代にはすでに魔法人が地球に来訪していた。




 その実現を可能としていたのはジャン=ジャック=アルベールという個体である。この個体は、現宇宙人類の発展に偉大な貢献をしたアンリ財団の設立者、アンリ=ミルフォードの配偶者として知られる『ジョン=スチュアート』と同一人物であるとされている。ジャン=ジャック=アルベールは現在の我々が行っている次元航海と似たような現象を、魔法技術によって実現していたと思われる。 




 確定情報でないのは、おそらくジャン=ジャック=アルベールは魔法人側の世界で没したために、地球に来ていたことを証明する科学的根拠はないからである。しかし、アンリ=ミルフォードが魔法人であったことは、その遺骸と子孫の遺伝情報の検査によって確認されている。




 また、アンリの直系子孫には代々、前述のジャン=ジャック=アルベールが魔法人であったことが伝達されていたという証言も得られているため、それらを総合すると94%の確度で『ジャン=ジャック=アルベール』=『ジョン=スチュアート』であるとする見解は正しい。




 つまり、21世紀の当初より、魔法人は将来的な現宇宙人類との接触を見越して、長期的な計画を立てていたということになる。ここで懸念されるのは魔法人が現宇宙人の権力中枢に入り込むことによって、魔法人側に一方的に有利なように利益誘導してきたのではないかという懸念である。




 しかし、現在の調査によれば、アンリ財団にそのような兆候は認められていない。




 また、子孫の話を総合しても、ジャンとアンリの抱いていた意図は『ご先祖様からはいつか時が来たら、異世界人(魔法人の古語的な表現)と地球人の架け橋になるようにと言われている』という理想論的な目標以上のものではないようである。




 以上の情報は、地球連邦設立の根幹に関わる上、一部の精神レベルの低い個体の、魔法人へのヘイト感情を煽りかねない内容を含んでいる。




 故に、精神レベルB以下の個体への情報伝達を禁止するものである。






(地球連邦総合データベース)






==============あとがき===================

 以上をもちまして、本作は完結となります。

 クセの強い構成の物語にも関わらず、ここまでお付き合いくださった読者の皆様に厚く御礼申し上げます。


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