最終章
終章その1 バーの準備
さて、ここまでお読み下さった方々、誠に有難う御座います。そろそろ当コラムも大詰めに入って来ています。そこで最後のお話として、その1とその2で、〆とさせて頂きたく思います。
まず、宅飲みでも宴会の臨時バーテンダーでも必要な、『準備』からお話しようと思います。様々な仕事や趣味がありますが、すべからく何事も『段取り8割』と申します。準備をキッチリやって初めて、良いモノが作られる訳ですね。
バーテンダーの準備と言いますと、五つの項目が挙げられるそうです。
こんなお酒があるこんなカクテルがあると『覚えておく』。
宅飲みでも宴会でも『事前に試して作ってみる』。
本職のバーテンダーでしたら、生の果実や果汁やシロップを用意しておかなければならないですから、それらの『仕込みをする』。
カクテルを作ってもらって飲むという行為自体が非日常なので、非日常を演出するために『テクニックを磨いておく』。
それらの準備ができた状態で、こんな飲み方がありますよ、などの『提案をする』。
以上が、バーテンダーがする準備だと言われています。さすがにただの宅飲みの集まりで、ここまで準備をしてきたら、「変わり者だなぁ」と変な顔をされてしまうかも知れません。そこは臨機応変に。
しかしやっておく意味はあると思います。
以前にある宴会にて、私がバーテンダーとしてカクテルメイクをしていた時の事。ある参加者さんから、
「この人はお酒が飲めない。しかし、お酒を飲んでいる雰囲気を味わってもらいたい。何かいいカクテルはないか?」
と無茶振りされ、さて困ったぞと頭の中をフル稼働させて出てきたカクテルは、
「ウイスキーのテイスティンググラスを使い、内側をジンで濡らして余分な液は捨て、縁はレモン果汁で湿らせて塩を付ける『スノースタイル』にし、グレープフルーツジュースのみを注いで提供をする」
という事をして、お酒の香りは感じつつもアルコールは極端に低く抑えた、そんなカクテルを即興で作ったのです。
一応、そのカクテルは好評だったようです。ちゃんとした感想は聞けませんでしたが。
そんなアクシデントみたいなものもたまにはありますので、自分の中の引き出しは多く持っていた方が良いですね。
そして私ですらそのような即興カクテルが作れるのですから、本職のバーテンダーさんはもっと準備に力を入れているはずです。そういった「裏の努力」に思いを馳せて、バーの扉を開けてみて下さい。きっと期待を裏切らない、美味しいお酒が飲めると思います。
カクテルの深淵の縁へようこそ。
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