ある屋敷で

@styuina

第1話

 ある古ぼけた屋敷の庭にあるベンチに、一人の老人が座っていました。

 彼は屋敷の家主に仕えた召使でしたが、その屋敷が売り払われたときに忘れられ、そのまま置いていかれたのです。

 老人は庭に一本残った小さい松に、ジャパジャパ水をやりながら

「なあ、お互い置いていかれちまったなあ。この水でお前だけでも生きろよ」

 と話しかけると、そのまま横になって、スースカ泣くようなイビキをかきながら眠りました。




 今では小さい杉しか残っていませんが、なぜかその杉の根本には、コンコンと水が湧いています。

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