月に還る

きょんきょん

月に還るお姫様

「お母さんは月のお姫様でね、これからお月様に帰らなくちゃいけないの」


 幼い私にそう語っていたお母さん。

 肌は透き通るような真っ白で、絵本に出てくるお姫様みたいなお母さん。


「あなたとは当分会えないけれど、出来ることならシワくちゃのおばあちゃんになってから来るのよ」


 それから数日後、真っ白な綺麗な服を来たお母さんは、本当のお姫様みたいだった。


 二十年経っても月を見上げる度にお母さんを思い出す。

 月に帰るなんて信じる年頃じゃないけど、お母さんが伝えたかったことはわかる。

 きっと私を悲しませたくなかったんだね。希望を持たせたかったんだね。


 満月の夜――お父さんも、私も、わんわん泣いてお母さんを見送ったけど、お母さんは笑って月に行ったよね。


 約束通り、まだまだそっちに行けないれど、今も月を見上げてはお母さんを思い出します。


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月に還る きょんきょん @kyosuke11920212

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