柄針の部屋

柄針

Time Dollのマリー・ハリソンについて

――始まりはTVアニメ『GOSICK』から。


 今では扱いに慣れてきて完全に自分のキャラに出来たマリー・ハリソンですが、その始まりはTVアニメのGOSICKからなんです。これで何となく感じていた物が取れた読者の方がいるかもしれませんね。もっと詳しく言えば、GOSICKのヴィクトリカですよね。(可愛かったなぁ……)


 とは言え、全部を見たという訳では無いんです。TVアニメを少し見て、原作の小説を何冊か読んだことがある程度です。ただそれでも彼女の魅力というのは伝わっていて、いつかこういうキャラクターを動かしてみたいって思ったんです。


 恐らく私が彼女に魅了された理由というのは、見た目だけではなく、あの物語性だったんだと思います。古めかしく、どこかシャーロックホームズの様な雰囲気がある……。そんな物語性や世界観もあって彼女により魅了されたのだと思いますね。


 1900年代という今より古い時代を選択したり、探偵という役職を使ったのは、やはりこの作品の影響でしょうね。(とは言え、探偵というより何でも屋の気も……)



――創作する以上、パクリは許されない。


 時間が経って創作をするとなった時、勿論このヴィクトリカのようなキャラが出てくる物語を書こうと思いました。ただ創作をする以上、パクリは許されません。故に私は人生で初めて公開する作品にヴィクトリカのようなキャラは出しませんでした。全く別の作品を書いたんです。


 ただそれでも、書きたい訳ですよ!


 それで考えたんです。ヴィクトリカというキャラクターを土台に、自分らしさを追加出来ないかという事を。


 現在のマリーの見た目というのは、長い黒髪にブラウンの瞳、フリルの付いた黒いドレスを着た小さな少女。人形の様に可愛らしく不気味……ですよね。この見た目というのは絶対に変えたくなかったんです。だからそれ以外の面で、このキャラクターらしさ、自分らしさを追加しようと考えたんです。



――追加したのは自分のやりたい事。


 何を追加しようかと考えた時、もういっそのこと自分の興味があること、やりたい事を詰め込もうと思ったんです。


 私が他に書きたかったテーマというのは時間旅行、言い換えればタイムスリップとかそういう話です。実は結構そういう系統の作品は好きで、そういうシナリオも書いてみたいと思ったんです。だから、このタイムスリップという要素をマリーの能力として詰め込みました。


 そして次にやりたかった事というのは、ヴァイオレット・エヴァーガーデンのように誰かを導くこと。誰かの気付きの手伝い、成長のきっかけを作るというシナリオです。そうしたシナリオを作るには、“純粋な子”というのが非常にキーワードになると思うのです。純粋だから気付けるものがあって、純粋だから傷つくこともある。だからマリーにはそういう良くも悪くも取れる純粋さを詰め込みました。


 そして最後に詰め込んだのはミステリアスさ。これはヴィクトリカもそうでしたが、見た目と言動が合わないという言わばギャップは、時に人を魅了します。マリーはそういうギャップと同時に、ミステリアスさも持ってほしかったんです。


 この子は何故探偵をしているのか。何故、時を覗く、時を越える能力を持っているのか。見た目は幼いけれど、この子の正体は何なのか。時折覗かせるマリーの感情。その根源は何なのか。


 そうした謎をマリーには持たせたかったのです。



――キャラに人間性を持たせるには欠点と過去が必要。


 キャラクターを作るには、これらの作業で終わりではありません。少なくとも私は次の工程として、キャラクターに“欠点”と“過去”を持たせます。


 人が架空のキャラクターに感情移入する瞬間というのは、キャラクターに何かしらの“欠点”があると分かった瞬間だと私は思います。故に、私はどのキャラクターにも必ず欠点を持たせます。ウォルダであれば人見知りや臆病さ。愛の式場のキャラクターであれば優柔不断や依存性などなど。


 よって、私はマリーにもある欠点を持たせています。それは“人の気持ちを察せない”ということです。これは私たちですら持っているのではないでしょうか。こうした欠点から「あるある~」や「分かる~」という想いを持っていただき、キャラクターに感情移入してもらう訳です。(書けているかは別として)


 そして欠点を持たせるには必然的に“キャラクターの過去”が必要です。何故そのキャラクターはそんな欠点を持っているのか。過去があることで欠点がさらに説得力を増すのです。そして同時に、過去があるからキャラクターの言葉一つひとつにも説得力が増すのです。


 故に、マリーにも過去を持たせました。時を扱う能力を持っている彼女です。それ相応の過去があるのは必然です。そして、何故彼女が自身の欠点を欠点と思っているのか。そうした過去を一つずつ作っていく中で生まれたのが『Time Doll』というシナリオだったのです。





――始まりはパクリでも、マリーは今では最高傑作のキャラクター。


 マリー・ハリソンというキャラクターには本当に様々な要素を詰め込みました。共存するかどうか怪しい要素まで詰め込みましたからね。でも、彼女は上手くそれらの要素と共存しているのです。だから、私はマリー・ハリソンというキャラクターを通して様々な形の物語、メッセージを伝えることが出来るのです。


 皆さんから見てどうかは分かりませんが、始まりはパクリでも、マリー・ハリソンは今では最高傑作のキャラクターです。彼女が紡いでいく物語をぜひ、楽しんでみてください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る