第十五話

 あいりが学校に来なくなってはや一週間が経過した。その頃にはもう期末試験も終わりを迎えていた。結果はいつもよりも少し悪かったと思う。勉強はしっかりした。けれど、あいりのことを考えると、テスト中、いつも以上に集中できたとはいえなかった。


 今は部室に集まり、これからのことについて話し合っている。みんな暗い表情をしており、こんな時にあいりがあればもっと明るい雰囲気になるのだろうと、不覚にも思ってしまう。


「それでは、期末試験も終わったことですし、また部活を始めていこうと思いますわ」


 返事はない。ただしーんとした時間だけが過ぎて行く。


「ほら!みなさん元気を出してくださいまし!あいりさんのことですが、先生方に聞いて見ました」


 それを聞くと一斉にみんなが美桜先輩に注目する。


「結果は連絡なし。無断欠席だそうです。一応家には連絡をしたそうなのですが、家にも誰もいなかったそうですわ」


 また沈黙が続くのかと思ったが、今度は一人発言する者がいた。


「みんなであいり先輩の家に行ってみたらいいんじゃないですか?住所くらいなら先生に聞けば教えてくれると思いますし」


 僕も椿の言葉に頷く。


「確かにそうですわね。私もあいりさんが心配ですわ。それじゃあ今からあいりさんの自宅にお見舞いに行きますわよ!」


 ガタッと音を立てて立ち上がり、一目散に部室から飛び出して行ってしまった。


「兄さん、私たちも行くわよ」


「うん、そうだね。雫も行こうか」


 コクリとただ静かに頷き、僕の後をちょこちょことついてくる。



★★★



「ここがあいりさんの家なのですね」


「そうみたいですね」


「なんか、人のいる気配を感じないのだけど」


 僕たちは学校から歩いて三十分ほどのところにある、あいりの家に来ていた。辺りは若干暗くなっており、周りを見ればちらほらと電気のついている家もある。そんな中で、あいりの家の電気はついていない。そして、誰かの話す声や生活音すらしない。


「ここでほんとにあってるんですか?流石にここではないんじゃないです?」


 僕は美桜先輩へと目を向ける。


「確かにここと、先生に言われたのですが...」


 先輩はインターホンのある場所まで歩いて行く。それについて行く感じで、僕たちも後に続く。


ピーンポーン♪


「...」


ピーンポーン♪


「でないですわね」


「そうですね...」


「どこか空いてるところはないかしら?」


「いや、それは流石にまずいでしょ」


 なんか椿がとんでもないことを言っていたが、流石に注意した。


「いえ、椿さんの言う通りかもしれませんわ。もし、あいりさんが家で倒れているならば、無理に入った方がいいのではなくて?」


「でもそんなことがあり得るんですか?」


「もしですわ。もし...」


 僕たちは無言で頷き、中に入れるところを探し始める。が、


「あ、玄関が空いてる...」


 僕がなんとなくそれに手をかけてみると、なんの抵抗もなく開いた。


「ますます怪しいですわね」


「ええ、何かありそうな感じです。兄さん、そのまま家に入るわよ」


 コクリと僕は頷く。


 さて、鬼が出るか蛇が出るか。それとも何もでないのか。僕たちは思い思いに足を踏み入れたのだった。




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