第13話 目撃者<邂逅をみた凡人>

 いやいや、なんだあれ? なんだあれ? ハロウィンにはまだ早いよね……日課のランニングをしていた僕こと、沖田翔は河原で異様な光景をみた。

 なんか全体的に黒い恰好にシルバーのアクセサリーを体に纏い、二本の剣を持った少年と、銀髪のゴスロリに黒い翼をつけた少女が楽しそうに話しているのだ。普段は小さい子供もいる河原なのだが、異常な光景に誰も寄り付かない。なんなんだろう、あの人たち? 知り合いにはなりたくないし,関わりたくはないので、さっさと僕も離れようと思ったタイミングで気づいた、

 神矢だぁぁぁぁぁ……知り合いになりたくないどころか親友だよ!! あれだ、確か『黒竜の騎士アルティメットモード』だ。中学のときに何か言ってた気がする。あれで僕が誘ったダブルデートに来たときは本気で殺そうかと思ったよね。最終決戦って何と戦うんだよ……

 じゃあ、隣に居るのは誰だ? あれ、あの綺麗な顔立ちはなんかみたことあるな……田中さんだーーーーー!! え、待ってなんだあれ? なんだあれ? 神矢に付き合わされているの? そういうプレイなの? 非リアだった親友が一気によくわけわからない道をいったことに驚きを隠せない。

 あれかなぁ、「そこのコンビニポテト半額だよ、行かないかい!?」とでも言って割り込んだ方がいいのかなぁ……



「紅姉さま……ようやくお会いできましたわ……でも、変な男がいますわね……あれが黒竜の騎士でしょうか?」



 僕がどうすべきか悩んでいると前の方から声がした。中学生だろうか、おそらくカラコンをつけているのだろう、赤色と金色のオッドアイのゴスロリに身を包んだ女の子がいる。しかもなぜか右腕に文字が書かれた包帯を巻いている。多分自分で書いたんだろう。器用だなぁ……しかもルーン文字だねぇ。神矢にゲームに出てくるケルト神話のキャラ知ってる? って聞いたらこれ覚えとけって覚えさせられたんだよね。無駄に記憶がいいので覚えてしまうんだ。

 あとゴスロリでわかりにくいけど、たぶん巨乳だ、僕の剣道で鍛えた視力は女子のバストのサイズを即座に見抜く。神矢にはスキル心眼とか呼ばれている僕の特技だ。ロリ巨乳ってやつかな。外見だけはタイプだなぁ……まあ、そんなことは些細な事だ。



「この子……黒竜の騎士を知っている……?」



 黒竜の騎士とは神矢の事だろう、中学のときに「俺は右腕に黒竜の力を身に宿している」とかいって右腕に包帯を巻いていたのがなつかしい。紅姉さまってだれだろう。神矢の横には田中さんしかいないはずだ。それとも目の前の少女にはなんかみえているんだろうか。

何か関わったらめんどうなことにまきこまれそうな予感がした、僕はすぐさま去って、ランニングを再開しようとした時に少女と目が合ってしまった。



「あなたは紅姉さまと黒竜の騎士を知っていますわね……少しお話を聞かせてもらえませんか?」

「いえ、知らないですけど……」

「虚言ですわね。あなたは確かに二人を見ていましたわ。そして何やら不審者の様につぶやいていましたし、黒竜の騎士という言葉に反応していましたのをみていますわよ」



 くっそ、思わず声に出してしまったかー、でも巻き込まれたくないなぁ。そろそろソシャゲのイベントはじまっちゃうんだよね。それにしても虚言とかリアルで使う人はじめてみたよ。神矢とだったら仲良くなれるんじゃないかな、この子……



「うーん、なんだかわからないなぁ。もう外も暗いから帰った方がいいんじゃないかな」

「いえ。黄泉の魔女の眷属としてあなたに聞きたいことがありますわ」

「すまないけど、僕はもう帰らなきゃいけないんだ、ごめんね」

「いえ。黄泉の魔女の眷属としてあなたに聞きたいことがありますわ」



 無限ループってこわくない? ゲームの中だけだと思っていたよ。でもこれはゲームとは違う。現実だ。僕は後ろを向いてすぐさまダッシュした。ふふ、現役運動部に追いつくことはむりだろう、ごめんね少女。それにしても黄泉の魔女って何だろう、流行ってるのかな? どこらかで聞いたことあるんだよねぇ



「うえーん、あの人に胸をもまれましたぁぁぁぁ」

「はぁっっ?」



 さっきの少女が僕を指さして泣き喚いた。通行人は少ないけど僕の方を何人かみてるし、スマホを操作しだした。あれ、これ通報されるのかな? やばい、人生が終わってしまう、ソシャゲができなくなる……



「わかったわかった、お兄さんとたっぷりお話をしようか……この子の冗談ですよー、僕はこの子と仲良しなんです」



 僕は引き返して彼女のそばに立ち笑顔で周りの人達に無害であることをアピールする。完全に信じたかわからないが周りの人たちは僕が少女のそばに来ても抵抗しないので安心したようだ。



「ふふ、『死の言葉』これが黄泉の魔女の眷属としての力ですわ」



 少女は小憎らしい顔で得意げに笑った。そうだねぇ、社会的に死にそうになったよ……くっそ、なんだかしらないけど黄泉の魔女が嫌いになったな……

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