第6話 6.女子トーク<魔女たちの交流>

「田中さん、学校はどう馴染めそう?」

「まだわからないことが多いですが楽しいです、共学なんで男子が多いのは少し緊張しますね」



 斎藤さんの問いに私は笑顔で答えた。慣れない学校にいるのにあまり苦にならないのは神矢と斎藤さんのおかげだろう。二人には感謝してもしきれないわね。

 最初こそ、あまり交流がなかったタイプのため警戒していたが、よく話してみると斎藤さんはとてもいい人だった。私が困っているとさりげなく手を差し伸べてくれるし、友達も紹介してくれたおかげで今の所は問題はない。

 しばらくは流行りのドラマの話なので盛り上がる。お姉ちゃんに言われて色々勉強しておいてよかった。




「そういえば昨日神矢のやつが迷惑かけなかった?」

「いえ、楽しくお話させていただきましたよ」

「本当? あいつ一見まともだけど、よく変なノリで変な事言いだすんだけど大丈夫だった?」



 多分変な事っていうのが昨日の私と神矢の厨二な会話の事だと思う。ごめんなさい、私はそういう会話大好きなのよね……変な会話と言われたが彼女が私の事を気遣ってくれているのがわかるので嫌な気はしない。私や神矢のように選ばれたものじゃなかったら、あのノリはきついだろうとわかるからだ。

 それにしても昨日は本当に楽しかった。久々に会うということもあったが、私は彼といる時間がとても好きなのだろう。昨日をお思い出すとついにやけてしまう。



「そうですね……ちょっと変わった所もありますが、とても楽しかったですよ」

「そうなの……意外ね。田中さんはああいうの大丈夫なんだ」

「ええ、まあ、女子高っていうのもあって、ああいうの好きな友達もいたんです」



 まあ、ああいうの好きなのは私だけどね。もちろんそんなことは言わない。あくまで友達の話ということにする。でも、神矢と斎藤さんは本当にただの幼馴染なのかしら。ラノベとかだと実はどちらかが好きって事あるわよね。さっきから神矢の話ばかりだし……



「あーなるほどね、女子高って結構変わった人がいるらしいものね。私もあいつに色々薦められたんだけどいまいちハマれなかったのよね。まあ、そのかわり違うものにはまったんだけど……でも田中さんがそういうのに偏見ないみたいで安心したわ……信じられる? あいつ昔ケガもしてないのに包帯とか眼帯とかしてたのよ」

「そうですね、やっぱり包帯とか眼帯ってかっこいいですよね、私もつけてみたいですもん」

「えっ……?」

「えっ……?」



 何か変な事を言っただろうか、斉藤さんが鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしている。彼女は一瞬考えるようにうなったが、すぐに笑顔に戻った。



「神矢に気を使わなくていいのよ。あいつも今はそんな格好しないしね」

「確かに普通の格好ですよね」



 どうやら私が神矢に気を使ったと思われたようだ。神矢の格好も本当に普通になったものだ。黒竜の騎士としての力を封印した彼はどこからみても普通の人間だ。

 やっぱり周りから見たらああいうファッションは変なのだろう。私もお姉ちゃんに止められたし……でも包帯とか眼帯とか着けるとテンションあがらない? 私はかっこいいと思うんだけど……



「そう……変わっているんだけど、よくも悪くも自分の好きなものを貫くのよね、それに他の人の好きなものを一切否定しないやつなのよ。その態度に救われたやつもいるのよね。だからあのバカにはいつも笑っていてほしいのよね」



 そういう斎藤さんは何か思い出を噛み締めるかのように空を見た。彼女と神矢には私の知らない歴史があるのだろう。それを思うとなぜか胸が痛んだ。



「あいつ人当たりがいいし、優しいからかわりかしどんな人とも結構浅くなら仲良くできるのよね、でも少し仲良くなると変な事をいう癖が出てドン引きされたすることも多いの……やめろって言っても『俺はこれも含めて俺なんだよ。魔女に恥じないように生きなければいけない』って言って譲らないのよ……だから田中さんがあいつの事引かないでくれて嬉しいのよね」



 私が高校で厨二を封印するといった時彼は笑わなかったし怒らなかった。おそらく彼にも色々な出来事があったのだ。斎藤さん心配しないでほしい。私が彼に対してひくことは絶対ないわ。でも厨二が悪化しちゃったらごめんなさい。



「それであなたたち一緒に登校していたけどどこまで仲良くなったの」



 さっきまで心配していた顔とは一転して斎藤さんは意地の悪そうな顔で私にたずねてきた。



「え……それは……」



 私は彼女の問いにどう答えようか迷った。偽装カップルということを説明するには私の秘密をいわなければならない。だが、もしも斎藤さんが神矢の事を好きだった場合、私が彼と付き合っているからと身を引いてしまうかもしれない。

 私たちは偽装カップルだ。勘違いで彼女の心を傷つけたくはないし、彼女に申し訳ないと思う。だから私は思い切ってたずねることにした。



「そんなこと聞くなんてもしかして斎藤さんは、神矢さんの事気になってるんですか?」

「え、そういうわけじゃないわよ。ただ、あいつ昔好きな人に振られてすごいへこんでた時期あったのよね、だから幸せになってほしいのよ。」

「昔の好きな人ですか……」



 好きだった人……そしてそれを聞くと同時に私の胸になにやらモヤモヤが広まるのを感じた。さっきからなにかしらこれ? まさか私に秘められた力が目覚める前触れ?



「神矢さんが好きだった人ってどんな人なんですか?」

「それはね……」



 斎藤さんの言葉は突如こちらに走ってきた神矢と黒づくめの連中によって中断させられてしまった。なにあの集団? 前の学校でよくやってた魔女集会を思い出すわね。

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