第5話 決戦 RZK会<カムランの戦い>

 この学校にはRZK会というのがある。それは生徒会や学校にも認知されていない非公式な部活のようなものだ。ちなみにRZK会の正式名称はR(リア充)Z(絶対)K(殺す)会だ。

 会の内容は文化祭の後や、クリスマスなど、カップルが喜びそうなイベントを一人で過ごすのきつい!! って連中が集まりみんなで騒いだりなどだ。愛の女神に選ばれなかったもの達が、愛の女神に選ばれカップルになったもの達を妬む、この世全ての嫉妬を凝縮したかのかのようなグループである。まったく、哀れな連中だぜ。まあ、俺もその一員なんだけど。

 そして、俺は漆黒の覆面(ハロウィンの時期に百均で買った)に漆黒のローブ(でかいごみ袋に穴をあけて顔と手が出せるようになっている)を身にまとった連中に囲まれていた。



「ここに呼ばれた理由はわかっているな、モードレットよ」

「話せばわかる……っていっても無駄だよな。アーサー……」


 アーサーと呼ばれた男の言葉で他の連中が俺を囲む。ちなみに、モードレットってのは俺のコードネームである。この衣装とコードネームで呼び合うっていうのは俺が提案して見事可決された。みんな男の子だからこういうの好きなんだよ。



「ねえ……みてよ、あの格好……いつもの馬鹿達でしょ。恥ずかしくないのかしら」

「あんなことやってるから恋人できないって気づかないのかしらね……」

「ごめん、今俺たち大事な話をしてるから茶々いれないでくれないかな!?」



 遠目で俺たちを指差していた女生徒達にアーサーが半泣きになって注意をすると女生徒達はかかわりたくないとばかりに、どこかにいってしまった。仕切りなおすように咳払いをしてアーサーは俺をみた。



「今から貴様の処遇を決める円卓会議を始める。嘘偽りなく答えよ」

「ああ、嘘はつかないと誓おう」



 俺はアーサーの円卓会議という言葉を聞き、少し気を引き締めた。もちろん円卓なんてないよ、だって体育館の裏だもんな。円卓会議とは規則を破ったであろうものを、無罪か有罪か判断する会議だ。ちなみに規則には彼女を作ったら何をされても文句は言えないというのがある。思いっきり破ってしまったが仕方ない。せめて聞かれたことに素直に答え減罪を願うくらいしか俺にできる事はない。




「昨日女の子と一緒に帰宅したと聞くがそれは本当か?」

「ああ、本当だ。女の子の部屋ってテンション上がるよな。いい匂いは……しなかったが楽しかったよ」

『有罪!! 有罪!』



 まあ、昨日紅の家に行ったしな。あそこで俺達は偽装とはいえ付き合うことになったんだよな。今度は俺の部屋に呼んだりしてもいいのかな? でも偽装カップルだもんなぁ。なんかむっちゃ警戒されそう。



「今日女の子と登校したというのは本当か?」

「ああ、本当だ。待ち合わせのとき恥ずかしくって中々声かけられなかったっていわれたんだけどすっげー可愛くない?」

『有罪!! 有罪!!』



 今日の朝は最高だったな。女の子との登校ってこんなにテンションあがるものとは思わなかったし、ラノベの世界だけだと思ってたよ。改めて思うけど通常時の紅くっそ可愛いよな。あー、でも厨二全開な時も可愛いんだよな。これが明日から毎日続くとか異世界転生してチートスキルをもらうより嬉しい。なぜか周りの連中の有罪の声が大きくなってきてるんだけど……



「ぐぬぬぬ、今日の昼に女の子の手作り弁当を食べていたというのは本当か?」

「ああ、あいつすっごい料理上手なんだよ!! 今度頼んだらお菓子とかも作ってくれないかな」

『有罪!! 有罪!!』



 料理も美味しかったし、昔の事を覚えていたのも感動したなぁ。俺が幸せを噛み締めていると周りの連中からの殺気が増してきた気がする。え、本当になんでだ!?



「決まった……貴様は有罪だ。最も重い刑に処す。具体的に言うと捕まえて、恥ずかしい写真撮って田中さんに送り付けてやるよ!!」

「なんでだよ、正直に言ったじゃん」

「お前頭おかしいじゃないか? 正直に言えばいいってもんじゃないんだよ、俺達はリア充が憎いんだよ!! なのになんでのろけ話ばかりすんの? お前には童貞の心がわからないのかよ!! 皆の者かかれ、裏切り者に処罰を!!」



 嫉妬にかられた覆面の男どもが俺に襲い掛かる。俺はすぐさま逃亡を図った。あいにくだが俺は常に異世界に召喚されても対応できるように体を鍛えている。具体的に言うと運動部には勝てないけど普通の高校生よりはマシ程度の身体能力かな。

 広がりすぎた包囲網に対し、俺は一点突破を試みた。こいつらも学校内ならともかく、外に行けば追いかけてはこないはずだ。だってあんな格好で街中歩くなんて恥ずかしいからな。



「残念だがここは通さないよ……」



 俺がRZK会の連中を撒いて少し油断したところだった。進路を塞ぐかのようにふらりと一人の漆黒の覆面の男が現れた。手には木刀を持っている。



「沖田……何でお前が……」

「アーサーに頼まれたのさ。あと今の僕はランスロットと呼んでもらおうか」



 顔は見えないが俺は声で正体を察した。でもなぜ沖田が? こいつは剣道強いし、部内での人望もあるらしく結構もてる。後輩に告白されたけどどうしようって相談された時に「ふひひ、さーせん。僕は十歳以下の女の子にしか興奮できないんだ、ごめんね」って言えばいいんじゃない? って言ってから恋愛相談は一切されなくなったが、おそらく俺の知らない間にも告白されているのだろう。そんなモテキャラの沖田がなんでこいつらと……? まさか紅に惚れたとか? あいつ本性を知らなければ綺麗な女の子だから……まあ、本性の方が可愛いんだけど。



「お前がこいつらに力を貸す義理はないはずだろ。まさか……」

「ご名答。クリスマスにはね……fgoで新キャラが実装されると思うんだ……」



 うん、全然違った。紅関係なかった。なにがご名答だよ、なんも答えてねーよ。沖田はアーサーから渡されたであろう、アイチューンズカードを俺に見せながら言った。ガチャのためかー、じゃあ仕方ないな。いつもの沖田だ。ソシャゲのためなら友情だろうがなんだろうが全てを切り捨てる……俺はこいつの生き方を否定しない。なにか譲れないもののために生きる人生悪くない……むしろいい!!

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