超絶人気アイドルが俺を必要とするのには理由がある

 原作は下記になります。


https://kakuyomu.jp/works/1177354054896587067



 大変お待たせして申し訳ありませんでした。


 色んな意味で手を着けるべきか悩みました。

 キャラの個性として、こういう喋り方、考え方をするキャラだからこうした書き方になっているという部分はあると思いますので、文章的な間違いを指摘するのが正しいことなのか、率直に言えば判断ができません。

 また、書き直すことでこういうキャラではないからと、そう作者様に感じさせてしまうかも知れません。

 それを踏まえた上で、あくまで企画の趣旨に沿って、作者様の不満を覚悟した上で改稿をしています。





 中三の秋、俺は雷のような出会いに襲われた。 いや、おかしいこと言ってるのは分かってる。 でもそうとしか言いようがないくらい、それは突然で衝撃的だった。



 濡れた髪をバスタオルでガシガシ乱暴に拭く。 風呂上りのこの時間は何とも言えず気持ちがいい。

 扇風機に当たりながら、何気なくテレビのスイッチをオンにした。


 ちょうどはじまったローカル番組のオープニング。


 何かが落ちた音が聞こえた。 リモコンを落としていたことに気付いたのはずっと後のことだ。 それどころじゃなかった。


 全身を駆け抜けた電流でおかしくなったように、心臓がバクバクと脈を打った。


 画面には、アイドルユニットひじり84の12人。 だけど、俺の目にはたった1人しか見えていなかった。



──山吹さくら



 彼女、ただ1人。


──エネルギーが直に伝わるような激しいダンス。


──高音で美しく奏でられる楽器のような華やかな歌声。


──人の心に簡単に触れるような清らかな笑顔。


 そのどれもが、俺にとっては衝撃だった。 こんな衝撃を受けたことは一度もない。


 映像でこの迫力。 これがもしライブだったら、どれだけすごいんだろう。


 行きたい──絶対にライブに行きたい。 そう思った。


 ずっと両親と暮らしていたら、山吹さくらに出会えなかったかもしれない。 出会っていても、これほど鮮烈な印象を得なかったかもしれない。


 だからこそ、俺は運命を感じた。


「じいちゃん! 俺、学校に行く!」

「よく言った、章。 それでこそ坂本家の跡取りじゃ!」


 次の日から、俺は休まず学校に行った。 がんばって勉強した。 成績も少しずつ上がった。

 因数分解は強敵だった。 現在分詞は、今でもさっぱりだ。


 それでも俺は山吹さくらを直に見たいと、その一心でがんばり続けた。


 そして、東京の高校を受験し見事に合格した。


 小学校のころは人気者。 自分には、何だってできると信じて疑わなかった。 わがままで、ごうまんな性格だった。


 中学に入ってからはいじめられっこ。 一時は学校にも行けなくなった。 何事にも自信を持てなくなった。


 でも俺は、山吹さくらと出会い、努力するようになった。

 何だってできるとは思わない。 何かできることがある、そんな風に思えるようになった。


 これは、そんな俺の東京での高校生活を描いた物語。


==========


 入学式の日、通学路──俺はある十字路で、予定通り足を止めた。

 通称『さくらスクエア』。 山吹さくらの看板が取り囲むように配置されている。 中に立つと、まるで山吹さくらに囲まれているようだ。

 俺にとっては幸せな場所。 都会のオアシス。

 ギリギリまで山吹さくらを堪能したあと、遅刻しないようその場を離れた。


 同じ制服を着た人の列。 急ぐでもなく、のんびりでもなく、同じ方向に向かって歩いている。

 見上げた先には咲き誇る満開の桜。 どこからかヤマブキの香りが漂ってくる。

 目と鼻で花を楽しみつつも俺は足を速める。 さくらスクエアに長居し過ぎた。


 俺の少し先で車が停まる音。 山吹さくらと同じ名前の花に見惚れ、俺は上を向いていた。 だから、バンから人が降りてきたのに気付かなかった。

 そして、気付かなかったのは俺だけじゃなかったようだ。


 俺たちは出会い頭にぶつかった。


 『やばい!』と、そう思って相手を見ると、軽く悲鳴を上げた女の子が転びそうになっていた。

 俺は反射的に、その女の子を支えようと必死に手を引っ張った。 その身体は、俺が思ったよりもずっと軽かった。 ふわふわで、守らなくてはいけない存在に思えた。


 そう思ったせいか、咄嗟のことだったからか、思わず力が入りすぎた。 ヤッベ!

 強く引っ張りすぎて、倒れないように引き寄せた体が勢い余ってまたぶつかった。


 彼女の顔で視界が埋め尽くされたと思ったら、顔が見えなくなるくらいに近付く。 そして唇と唇がぶつかった。

 つまり、そう──俺たちはキスをしていた。


 ほんの数秒のこと。 そのお味は、地味だった。 彼女の顔が地味だったから、というのもあったかも知れない。 とにかく、いちご味でもレモン味でもなかった。

 それが不可抗力の、俺のファーストキスの味だった。


 どうせなら、めっちゃかわいい子とだったらよかったのに。

 少し落ち込みつつ思ったそれがどこかに通じたのかどうか、分からない。

 唇が離れてまた彼女の顔が見え──俺とぶつかった地味な女子は、山吹さくらになっていた。


 さくらスマイルだった。

 さくらスメルもした。 嗅いだことはないけど多分さくらスメルだ。


 東京の高校に進学し、入学式初日になんてラッキーなんだ!

 って、いや待て。 ぶつかった女子が山吹さくらだという確証はまだない。 山吹さくらへの熱い想いから、幻覚を見ているのかもしれない。

 そもそも、東京の女の子はみんなかわいいのかもしれない。


 そう思って見ると不思議なことに、山吹さくらは消えていた。 代わりにそこにいたのは、一瞬見えた地味な女子。

 艶のないおさげ髪に大きいメガネ。 地味の代表取締役社長みたいな女子だった。


 わけが分からず呆気に取られていると、女子がぶつぶつ言いながら俺に背を向ける。 俺のことも今のことも気に留めていないようで、俺もそんなに気に留めなかった。


 彼女の背中を何となく眺めていた俺の目に、風が2枚の花びらを運んできた。

 1枚は黄色くて、もう1枚は淡いピンク色。


「ヤマブキ……さくら……」


 山吹さくらのことを意識して言ったつもりはない。 花びらを見て、その花の名を口にしただけ。 独り言程度に。


 地味な女子が立ち止まってこちらを振り返る。 俺を一目見るなり顔を赤らめ、足早に去っていった。


 俺は、追いかけようとは思わなかった。 ぶつかったのはお互い様なんだから。



 相手が山吹さくらってわけじゃないんだから。






 序文に書いたように迷いはありますが、文章として間違っていると思われる部分を指摘させていただきます。


「出会いは俺に《とって》突然だった。」


 明確な間違いとまで断言はできないのですが、《とって》というのはある人物の視点から見ればそうである、という時に使うことが多いものです。

 確かに主人公の視点からすると突然なので間違っていないように見えますが、ある人物の視点からするとそうであるということは、逆に言えば違う人物の視点からするとそうではないということになります。

「あいつには簡単なことでも俺に《とって》はそうじゃなかった」

「私に《とって》はゴミだが息子に《とって》は宝物だ」

 こんな感じです。

 完全な間違いとまでは言えないですが、突然でない誰かがいるのかと、少し気になりました。



 桜に見惚れているところに車が停まったシーンですが、車の特徴が分かるのは少しおかしくないかなと感じます。 女の子が地味だったからというのも同じで見ていないはずなのに視覚の印象で語っていて違和感がありますね。

 見ていなかったと強調しているのだからそこは注意しましょう。

 それとお互いに認識できなかったと、相手側の認識、つまり語り手が口にするのはいささかおかしい表現が入っているのも少々違和感があります。


『二人は、出会い頭にぶつかった。』

 というのも不意に三人称のようになってしまっている点で気になります。


 一人称なので私が直したことで主人公の個性からするとむしろおかしくなってしまっていると、作者様がそう感じるかも知れません。 なのであくまで一例として受け止めていただければと思います。

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