彼は精霊の子、ラー・ロウ。それでもまだ彼は運命とは別の道を望む——。

 緑の髪を持った青年、ラー・ロウ。
 それは個人の名ではなく、間違えて生まれてきた精霊の子と言われる彼らを総称する呼び名だといいます。

 ラー・ロウとして生まれた者は、いずれ「森へと帰る」から他の人間たちと基本的には交わらず、家も持たない。けれど、この物語の語り手の「俺」は、人の中で、人と交わって暮らしています。

 彼と同じような、おそらくは彼の数少ないラー・ロウの友人が森へと帰る日の彼の慟哭は、帰りゆくその友人の穏やかな様子とは対照的に、あまりに悲痛で、読んでいるこちらの胸にも突き刺さります。

 あらかじめ定められた運命を知り、取り巻く人々も、同胞もそれを受け入れて生きているのに、それに抗う——というよりは、初めから違う望みを持って生まれてしまった精霊の子の苦悩はいかばかりか……と思いつつも、それさえも抑えた美しい表現が淡く包み込んでいるようでした。

 静かで穏やかな、けれど決して折れない大樹のような彼の強い願いが、短いながらも深く心を揺さぶる物語です。

 おすすめです!

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