"すべてが縁で繋がっていて、意味のないことなんて何処にもない世界で"

 北陸の旧家、梅小路家の一人娘、翠子さんは祖母が亡くなった冬のとある日、ふと自分の左足の小指が「ほどけて」いることに気づきます。日を追うごとに、次は右足の小指が、そして次は左手の小指が……。

 そんな怪異に見舞われた彼女を救ったのは、銀縁眼鏡にスーツの男性と、街の若者然とした二人組でした。

 彼らは怪異を調査し、祓うという公的機関に属する人々だというのですが——!?

 自身に起きた怪異をきっかけに、その謎の機関「対怪異浄化情報収集室」に所属し、怪異と対峙することになった翠子さん。名家のお嬢さんらしくどこかおっとりとしていながらも芯はしっかり者の彼女と、怪異が大好きで分析はピカイチ、でも「見えない」トラブルメーカー気味な先生、勧修寺双樹、なんだかんだ彼らの世話を焼いてしまう「祓える」青年、烏丸颯。

 三者三様それぞれとっても個性的な彼らが挑む怪異は人の心に潜む様々な情念が絡んでいるのですが、翠子さんの視点を通すことでどこか軽やかで——それでも怖いものはやっぱり怖かったり……と先が気になってあっという間に読み切ってしまいました。

 いくつもの事件を解決する合間に見えてくる思わぬ縁に、このレビューのタイトルにも使わせていただいた翠子さんのセリフがとても響いてきます。

 少しずつ進むもだ恋も魅力。そして何より翠子さんの目を通して語られる世界が不思議と美しさに満ちていて、まだまだ解けていない「呪」の秘密も気になるし、続きをください!! と叫びたくなる一作でした。ください!

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