第22話 名前がある

人ではなくなった、忌まわしい呪いにかかりその呪いによって


…私は



「私は…今が1番幸せなんです」


シャルムのにっこりと笑う姿を見て


「……主さん…歪んでいるでありんす」


そんな言葉しか出てこなかった


……


「違いありません…そう言えば、あなたはどうなんですか?」


「わっち?」


「あなたは私を引き抜きに来たと言ったのに…ただただ喚いているだけでしたが…」


むむむ


「失礼でありんすね……ま、わっちにはこう言うのは向いていなかっただけでありんす」


嫌いと言ったけど…


憎しみも特にない……羨ましいだけの相手を連れていくなんて無理でありんした


アラクネは立ち去ろうとする


「そういえば…あなたのお名前は?」


「…わっちに名前はありんせん…低級には名前は必要ないでありんすし」


え、低級の私は名前がありますが…


シャルムは首を傾げ考え込む


「表情分かりづらいのに、不思議そうな顔…元人間ならそうなるでありんすね…。この際でありんす…説明してあげんしょう」



_____


「……。大まかな話でありんすが上級の特殊枠…例えば古龍は数が少なく特定しやすいことから持って生まれた名前で呼ばれるでありんす」


……地龍が地龍族と呼ばれないような感じざんす


「次に上級魔族は数が少し多くその上、地位もあるので名前と苗字がつくでありんす」


魔王クロエ・アーテル・エーデルシュタインやケイト・ヴァイスのように


「そして中級、名前のみが多いでありんす…」


種族的に数が多く把握するためには名前が必要だから……でありんすね


最後


「低級……種族名のみ、というか種族長とその他大勢みたいな扱いでありんす、わっちはアラクネ族…の特に出来損ない」



その辺にころがっている石のようざんすね


「…当たり前すぎて忘れていたけれど…名前があるのは羨ましいでありんす…。…こほん、はい、話はこれでおしまい…わっちは叱られに行くでありんす〜」


どうやったのか椅子が小さくなってアラクネの手に収まっている


そして小走りで立ち去ろうとする


……っ


「……クロエ様がその話を聞いたら…きっとあなたを仲間へ引き入れて下さりますよ?!」


「……。」


アラクネの瞳が微かにゆれる


「それはいいでありんすね…。でも、わっち悪い子ざんす。駒は駒らしく使われる…それからは抜けられない運命なんでござんすよ」


なぜだろうか、彼…いいえ、彼女を見ていたら昔の私のようで…いや…私よりも、もっと酷くて


誰かが救いの手を出さないと……


「少し話しただけで情が湧いた?それは無意味でありんす」


染み付いた日常を変えられるわけが無い


確かに……これは私のいた村の


呪いのようなもの


それに1人助けたところで…他の魔族をどうすべきなのか…


「ごめんなさい…浅はかな考えでした」


「…いいや…わっちは…、……っ…退散!退散でありんす!!」


アラクネの彼女は立ち去って行った


「……。クロエ様…!」




_____________



ブラッド・ヴォーグ


本当に手を出す気は無いらしい…


まあ、ワシ何も出来んからのぉ…


「……父様…」


ブラッドの背後から目元を前髪で隠した少年が現れる


「…なんだ?息子よ」


息子…?吸血鬼なのか…?


それにしては何か違和感が…


「そろそろ」


「……ちっ!クロエ・アーテル・エーデルシュタインよ!!」


「…なにかの?」


「お前の死は近いぞ」


悪役っぽいセリフを残しブラッドは蝙蝠になって飛んで行った


「……ふむ」


話し合いで何か出来ないかと思ったが…


お前に興味はない、興味があるのは魔王の座だけ……とか言うしなぁ


「どうしたものか……」


「兄者!!」「クロエ様!!」


勢いよく扉が開きヴェルデとシャルムが現れる


「おお!2人とも無事だっか!」


「「お怪我はされていませんか!?」」


ハモった…


「大丈夫じゃよ。2人は?」


「私は大丈夫です」


「僕も」


そうか


あとは…


「クロエ殿!!」


ケイトとレオンハルトが慌てて図書館へ入ってくる


「ケイト!……どうした?」


なにかケイトが焦っている


「オンブルくんが……!!」

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ジジイが転生してなんになる? 鹿尾菜 ケイ @sikaona

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