一歩

今日は特別な日だ。



僕は後期試験の結果を見に、受験した大学に来ていた。

合格した学生が大学生たちに胴上げされていた。

顔を見たら嫌でもその人が受かったのか落ちたのかが分かってしまう。自分はそのどちらになるのだろう。問題はそこそこ解けた。たぶん……。

「あった」

自分の受験番号が合格者の受験番号の中にあるのを見つけた。だが、僕は何の感慨もなかった。

前期試験で本命の大学を受けて落ちた。後期試験で受けた大学は、前期で受けた大学よりレベルが低い大学だった。だから受かったのだ。


僕は受かったのに冴えない顔をして、大学敷地内から出た。


僕は悩んでいた。両親は受かった大学に行けと言うだろう。

でも。僕が最も学びたいのは心理学で、今日合格した大学にはない学科だ。


僕はこれまで色んなことをそつなくこなしてきたタイプだった。それがこの大学入試で初めての挫折。


自分のやりたいことを曲げて大学に行くか、一年浪人して、来年志望校へ行くか。


将来を左右する大事な選択だ。


浪人しても必ず志望校に合格するわけではない。それは分かってる。一年棒に振るだけになるかもしれない。


それでもやっぱり心理学を学びたい。



今日は特別な日だ。


僕は浪人をすることを決めた。


受かる保証がないような不安定な未来を選択したのは初めてだ。この選択が人生で吉と出るかわからないけれど、浪人をしなかったら後悔はする気がした。


自分で決断した大きな一歩。

大丈夫。きっといい未来が待ってる。



                 了

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