第11話



 マルコムとアラベラは、街のはずれにあるダンジョンへ向かった。


 ――そこは、その実、つい昨日レイが一人で攻略してしまったダンジョンだった。


「“神聖剣”があれば、こんなダンジョン楽勝だろ」


 マルコムは胸を張ってそう宣言する。


「ええ、マルコム様なら、簡単でしょう」


 黒エルフのアラベラも同意する。


「まぁ任せろ」


 そう言って意気揚々と裂け目の中に入っていくマルコム。


 そのまま暗がりの廊下をどんどん進んでいくと、一行はすぐにモンスターと遭遇した。


「――ゴースト・ファイヤーです」


 アラベラは腰から杖を引き抜く。


 だが、アラベラが魔法を放つ前に、マルコムが剣を抜き去って、突撃していく。


「死ねぇぇぇ!!!」


 スキル“神聖剣”を発動すると、その剣が光り輝き、ゴーストの体を真っ二つに切り裂いた。


 ――だが、実体を持たないゴーストはすぐさま再生する。


「なに!?」


 マルコムは再び剣を振るうが、やはりゴーストはすぐに再生する。


「マルコム様。物理攻撃は効きません。ここは私にお任せを」


 そう言って、アラベラが氷の攻撃を放つ。


「“ブリザード・ウインド”」


 無数の氷粒がゴースト・ファイヤーに襲いかかる。


「ギィィィィ!!!!!』


 その攻撃に耐えかねてゴースト・ファイヤーが悲鳴をあげる。


 そこにアラベラがさらに魔法を畳み掛けると、ゴースト・ファイヤーはついに魔力を失って四散した。


「なんだよ、剣で切れないのかよ」


 自分ではなくアラベラがモンスターを倒したことに機嫌を悪くするマルコム。


「ゴーストは相性が悪かったのです。お気にならず」


 アラベラはそう言って主人を慰める。


「……さっさと先に進むぞ」


「はい、ご主人様」


 と、再び歩き出したマルコムたちだったが、角を曲がったところで、すぐに次のモンスターに遭遇した。


 今度の相手はダンジョン・ウルフだった。


 ウルフの中では凶暴だが、C、Dランクのダンジョンにもよく出没する下級のモンスターだった」


「今度こそ俺の“神聖剣”をくらえ!!」


 マルコムは再び“神聖剣”で斬りかかる。


 今度は流石にダメージを与えることに成功した。

 ダンジョン・ウルフは一撃では死ななかったが、2度目の斬撃で四散した。


「こんなもんだ。Bランクダンジョンなんて楽勝だな」


「流石、マルコム様」


 と、アラベラは主人を褒め称える。


 ――だが。


「――なに、またか!?」


 向こう側から、ダンジョン・ウルフが再び現れる。

 しかも、今回は十匹以上いる。


「“ブリザード・ウインド”!」


 アラベラが魔法攻撃でダンジョン・ウルフたちに全体攻撃を仕掛ける。

 敵が怯んだところで、マルコムが片付けていく。


 だが、


「ちょっと、多すぎないか……?」


 ギルド職員の話では、あまりモンスターは出ないという話だった。

 だが、まだ入り口から少しのところなのに、多くのモンスターと遭遇している。

 これでは話が違うではないか。


 と、マルコムは憤るが――――それもそのはず。


 レイが攻略した時、アンデット系のモンスター以外は全く現れなかった。

 それは、単純に、ステータスが桁違いのレイに恐れをなして隠れていたにすぎないのだ。


 それに比べて、マルコムは、神聖剣の強化があるとはいえ、せいぜい並みの冒険者程度の力しかなかった。

 だから、モンスターたちは遠慮なく襲いかかってくるのだ。


「くそッ! また集まってきたぞ!」


「キリがないですね……」


 二人は、なんとか襲いかかってくるモンスターを順番に倒していくが、いかんせん数が多すぎた。

 

 なんとか全てのウルフを倒した時には、二人はヘトヘトになっていた。


「……クソッ。急ぐぞ、アラベラ。こんなとこで苦戦してたら、クエストが終わらない」


「は、はい……ご主人様」


 ――――初めてのダンジョン攻略に苦戦するマルコムパーティーだった。


 †

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