肥前日報 —肥前脳内解剖ワールド—

肥前重二

第1話

2020年10月29日木曜日


「今日もありふれた日だな。過ぎる時間をせき止めるアクションも何もない。」


肥前はこう見えて普通の人間だ。まっさらなくだり道を、つるりとしたタイヤで滑る。

ハンドルも握らない。


しかし、「突飛つ」した出来事が起きた時、肥前は己のペースを忘れてエンジンをかける。

くだり道を猛走する。

ハンドルをぎしりと握り、背筋を伸ばす。


しかし坂の終わりには巨大な壁が凛と立ち、追突致すボロ車を砕かせている。


「よし!突っ込むぞ、」


肥前の足は隆々と、その筋肉を震わせて、

アクセルペダルを床に食い込ましながら、最終余力を余んとす。


「ばばばっここ、ばばばー、ばばっばば、ばこばこばこ」

「ズズズッドド、ズズズー、ズズッズズ、ズドズドズド」


壁にぶち当たった一つの光。

壁からモクモク放たる煙。

辺りは一帯緊張しい。

音ひとつなし。


一瞬の出来事だったが、それは長かった。

静かと思ったが、とてもうるさかった。

壁は光を殺したようだったが、分厚い身体を貫かれていた。


煙の中から飛び出た、一光。

それは自らを輝かせて、周りを照らした。


肥前は太陽であった。

そして周りのボロ車に向かって、放った一言。


「真、演技してんなぁ〜!」





—後談—

本質というのはとても恥ずかしがり屋なんですよ。

すぐに隠れて、姿を変えるんです。

でもみんなはそれに気づかないで、偽りの意だけを享受してしまうのです。

少し考えれば、一歩下がれば、誰でも気づけるのに。

例えば、「悪口の悪口は悪口か。」という問題。

一見、たとえ「悪口」に対してだとて「暴言」を放ったなら、それは第三者からすれば「悪口」だ、と考えようでしょうが、実はそうではないのです。

こう言えば簡単でしょうか、「悪い奴の悪い奴は悪い奴?」

答えは、悪いやつではなく良い奴、ですよね。

悪に対する反乱は善であります。


このように本質は問題全体に隠されているんです。

だから、一歩下がって、ひとつ上の目線で、物事を判断することが大切なのです。

みなさんも、そろそろ、そのボロ車を捨てて自由になりましょうよ。


「相手を舐め回す。すれば自ずと一歩下がった客観視ができる。」


そんな素敵な言葉を、みなさんボロ車へ。

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