自称、婚約破棄令嬢の日記集

マキシム

自称、婚約破棄令嬢の日記集

ごきげんよう、私は某辺境伯令嬢のセリーヌと申します。私は突然、この国の王太子に婚約破棄をつきつけられました。婚約破棄の理由については、どうやら王太子には思い人の男爵令嬢がいたらしく、その人と一緒になりたいらしい


【セリーヌ辺境伯令嬢】

「私の苦労は何だったのかしら・・・・」


〇月〇日

私は王家より慰謝料と謝罪を受け、正式に婚約解消となりました。王太子は謹慎処分のみの処分となりました。なぜ謹慎なのかというと陛下の世継ぎは王太子しかいないらしく廃嫡が不可能らしいです。しかも思い人の男爵令嬢を新しい婚約者にするそうです。宰相を務める父は大層お怒りで王家のやり方に不満を抱きました。私の苦労もこんな形で終わるなんて、正直、腹が立ちました。ですが、どうすることもできず、王家の指示に従いました


〇月〇日

その後、私は辺境伯家の領地へ帰還することになりました。私自身も婚約破棄の件で王都にいづらくなり、傷心旅行も兼ねて領地へ帰ることになりました。領地に着き、辺境伯を務める母が出迎えてくれました。母は何も言わずに私を抱きしめてくれました。夕食は私が大好きなクラムチャウダーです、味の方はしょっぱいです


【セリーヌ辺境伯令嬢】

「あれ、クラムチャウダーってしょっぱかったけ、グスン。」


〇月〇日

私は領地が経営する観光名所を一つ一つ見てまわり、久しぶりにリフレッシュいたしました。正直、妃教育はきつくて何度もくじけそうになりましたが、何とかこなしてきました。妃教育の忙しさで王太子殿下との交流を疎かにした結果、王太子の浮気を許すことになってしまいました。今、思い出すだけでも腹立たしいです。私は苦しい思いで頑張っていたのに・・・・


【セリーヌ辺境伯令嬢】

「あのクソ王子が!」


〇月〇日

父から手紙が来ました。最近、王太子と思い人の仲は上手くいっていないようである。思い人は妃教育を受けていることで会う機会が減っているのだという。最近では王太子は別の御令嬢の方へ足を運んでいるらしい、何やってるんだよ、あの王太子は・・・・


〇月〇日

私の下に新婚約者である想い人から手紙が届きました。なんで届いたのか一応、内容を見てみると・・・・


【セリーヌ様へ】

「セリーヌ様、突然の御手紙、申し訳ありません。セリーヌ様が王太子殿下との婚約を解消され、私が新しく王太子殿下の婚約者を務めることになりました。妃教育は忙しく殿下と会う機会が減ってきました。妃教育が思いの他、厳しく、この教育を受けていたセリーヌ様に頭が下がります。それは別として実は王太子殿下が別の御令嬢と一緒にいることが多くなり、私と会うこともなくなりました。今にして思えば、セリーヌ様に対し、大変失礼な事をしたと深く後悔しております。今さらですが申し訳ありませんでした。」


【セリーヌ辺境伯令嬢】

「何を今さら・・・・」


手紙の内容を見ると、遅めの謝罪と王太子の近況報告でした。正直、謝罪されても遅いです。一応、何かの役に立つと思い、取っておくことにしました


〇月〇日

父からまた手紙がきました。内容は驚くべきものでした。何と王太子が想い人である男爵令嬢に婚約破棄をつきつけたそうです。想い人である男爵令嬢は王太子の新しい交際相手に嫌がらせをした罪で現在、牢獄に入れられたようです。王太子は次の交際相手である子爵令嬢を新しい婚約者にしたそうです。父を始め、他の貴族も男爵令嬢が王妃になることに疑問を持ちましたが、それ以上に王太子がコロコロと婚約者を変えるのはどうなんだと不満を口にしていました。王太子は廃嫡されず結局、子爵令嬢を新しい婚約者にしたそうです。ちなみに男爵令嬢は牢の中で病死したそうです。父曰く毒杯を飲まされたようである。正直、哀れに思いました


【セリーヌ辺境伯令嬢】

「何やってんだ、あの男は。」


〇月〇日

父からまた手紙がきました。王妃様の母国である同盟国から使者がきたようです。使者が王太子の婚約者が私でないことを疑問に思い質問したそうです。陛下は王太子の婚約者に相応しくないといって誤魔化していました。父は怒りを通り越して呆れた表情で陛下を見ていたようです。新しい婚約者が子爵令嬢と聞いた途端、本来、婚約者は公爵~伯爵までの高貴な身分から取るのが習わしで子爵令嬢はせいぜい、国王の側室として迎えるのが普通なのだと使者がおっしゃており、陛下は上手く答えられず、王妃様はそんな国王を無視し、父が何とか誤魔化したそうです


【セリーヌ辺境伯令嬢】

「あほくさ。」


〇月〇日

私が辺境伯家の領地でくつろいでいると、母から呼び出しをくらいました。母から新しい婚約者を探すよういわれました。正直、男性不信があり、母に伝えましたが、形だけでも見つけるよう迫られました


【セリーヌ辺境伯令嬢】

「婚約者って、どうせいちゅうねん。」


〇月〇日

父からまた手紙がきました。何と王太子が子爵令嬢に婚約破棄を突きつけたそうです。なんでそんなことになったかというと、王太子は何と平民の女の子にぞっこんで、子爵令嬢は嫉妬し平民をいびったそうです。平民の女の子は王太子殿下に泣きつき、子爵令嬢を断罪したそうである。子爵令嬢は牢屋に入れられ、そのまま病死したそうです。父曰くまた毒杯だという。そして王太子は平民の女の子を婚約者にしたそうです。国王はあっさり了承したそうです


【セリーヌ辺境伯令嬢】

「この国は本当に大丈夫か?」


〇月〇日

父が辺境伯領地へ帰還しました。父曰く辞表を出したそうです、もう愛想が尽きたそうで、陛下に思いとどまるよう命令されましたが、それを無視し、辞表をたたきつけたそうです。父に続いて、他の貴族たちも辞表をたたきつけ、それぞれ領地へと帰還したそうです。ちなみ父は密かに隠密を王都に潜伏させたそうで逐一報告するそうです


【セリーヌ辺境伯令嬢】

「本当にやばいんじゃないのかしら。」


〇月〇日

驚くべき事態が起きました。王都に潜伏している隠密の知らせによると何と王太子の婚約者である平民の女の子が王太子の側近と駆け落ちしたそうです。王太子は信頼していた側近と婚約者である平民の女の子の所業に大変ご立腹で探し出し、死刑にするよう国王に迫ったそうです


【セリーヌ辺境伯令嬢】

「自業自得やんけwwwwww」


正直、スカッとしました、ざまあみろwwwww


〇月〇日

王太子から手紙が届きました。正直、破り捨てたい気持ちでしたが一応、内容を確認しました


【セリーヌへ】

「セリーヌ、愛しの君へ、僕は悪い魔女に騙され、君という一輪の花を見過ごしてしまった。聞くところによれば君はまだ独身だとか、僕のために独り身を貫いていると思うと、僕は嬉しい!そんな君に僕の婚約者となる権利をやろう、待ってるよ♡」


私は速攻で手紙を破り捨てようとしましたが父に止められ、国王当てに送り届けることにしました


〇月〇日

国王陛下より謝罪の手紙が届きました。どうやらあの手紙がよほど答えたらしく、王太子は叱責されたそうです、ですが廃嫡にはいたっていないそうです


【セリーヌ辺境伯令嬢】

「もうこの国はだめだわ。」


〇月〇日

また王太子から手紙がきた。一応、内容を確認した


【セリーヌへ】

「このアバズレが!よくも父に密告したな!せっかく情けをかけてやったのに、貴様には失望した!だが僕は心が広い、直接、王都へ出向き、土下座をすれば許してやる!分かったな!」


ずいぶんと乱暴な手紙がきたものだ、また国王当てに届けることにした


〇月〇日

国王から王都へ来るよう勅命が下されました。父は無視していいと言いました。どうやら隠密の知らせでは主だった貴族たちが国王と王太子のやり方に嫌気が指して、それぞれの領地へ帰ったそうです。王妃は離縁状をたたきつけ、娘たちを連れて、密かに同盟国へと帰ったそうです


【セリーヌ辺境伯令嬢】

「ああ、終わったな。」


〇月〇日

王太子からまた手紙が来た、一応、内容を見た


【セリーヌへ】

「この前はすまなかった、どうか戻ってきてほしい!今、国は大混乱に陥っている、母はいつの間にか妹たちを連れて母国へ帰ったらしい、政治の中枢を担っていた貴族たちもそれぞれ領地へ帰ってしまった。君が僕の婚約者に返り咲けば僕の地位は安泰なんだ!だから戻ってきてくれ!」


完全に切羽詰まった状況に陥っていた内容であった


【セリーヌ辺境伯令嬢】

「ワロタwwwwww」


〇月〇日

王妃の母国である同盟国が兵をあげて元夫である国王の城へ進軍していた。国王は各地の貴族たちに出兵を命じた、もちろん我が領地にも来た。もちろん拒否した。貴族たちも静観し領地の警備にあたったそうである。ちなみに軍隊も国王と王太子に愛想をつかし、同盟国へ寝返ったそうです


〇月〇日

同盟国の軍隊が王都を包囲し、国王は降伏したそうである、国王と王太子は平民に降格したそうです。貴族たちに同盟国は帰順すれば領地を安堵する書状が配られ、我が家も同盟国の支配下に入りました


【セリーヌ辺境伯令嬢】

「うん、良かった良かった。」


私たちの領地も安堵され、今まで通り辺境伯家として活動することが許されました。万々歳です、ですが私にはある課題がありました。そう婚約者探しです。母から圧力がかかり、探す羽目になりました


【セリーヌ辺境伯令嬢】

「どうせいちゅうねん!」


その後、セリーヌは何とか婚約者を見つけ、無事に結婚できた。夫は愛妻家で二男二女を儲け、幸せに暮らしました。そのころ王太子はというと・・・・


【元王太子】

「僕は王太子、いや元王太子だな、今は平民として活動している。」


父と二人でにこじんまりとした一軒家で暮らしていたが、父はその暮らしに耐え切れずに首をくくって死んでしまった。その姿を見た僕は・・・・


【元王太子】

「僕はどこで間違ってしまったんだ。」


僕は母に引き取られることなく平民として暮らし、何とか父と暮らしてきたが父は自殺してしまった。僕がコロコロと婚約者をかえたことで貴族たちの信頼を損ね、国民たちからも見捨てられた。母は僕の節操のなさに幻滅しており、セリーヌとの婚約破棄を誰よりも反対していた。でも父は僕を庇ってくれたおかげで廃嫡されず王太子として活動できたが、母からは蛇蝎の如く嫌われ、妹たちからも冷たい目で蔑まれたけど・・・・


【元王太子】

「昔の僕を殴りたいよ。」


そんな僕も生活に耐え切れず、柱にロープを設置し、僕はそのまま首をくくる準備をした


【元王太子】

「来世は真面目にいきたい。」


元王太子は首をくくり、この世を去った。元国王と元王太子の遺骸はもちろん王妃に引き取られることなく無縁仏に埋葬された



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