第33回 処女も犬にだって捧げきれるし、リアルに右腕をさしあげることもできるよ


理との地獄のコラボが終わった後、その翌日、事務所に呼ばれた。


俺は、理の魂を会議室の椅子に座って、待っている。


 


「待った~。豆君。」


短く、ぼさぼさした黒髪で小柄な女性が、ずれているメガネを整えながら話しかけてきた。


 


こんなに見た目に無頓着な女性は珍しいというか、こんなやつじゃないと理の伝説はやりきれないな。


 


「もしかして、理先輩ですか?」


俺は、本当に目の前の女性が理先輩か不安なため、聞いた。


 


「そうだよ。」


笑いながら、理は答えた。


 


「用事って何ですか?」


 


「そうだね。頭のおかしいやつとは早く話を終わらせたいよね。


私も早く済ませたいしね。」


 


俺は、理が自分の事を頭がおかしいやつと評することにびっくりした。


卑弥呼も、狂人を自覚していると言っていたし、本当に理解しているのだろう。


 


「理先輩、一つ聞いていいですか?」


俺は、本当に狂人を演じているのかどうかと好奇心が出てきた。


 


「いいよ。きっと、私が話したいことの一つだからね。」


理は、待っていましたと言わんとばかりに、にやつきながら答えた。


 


「あのキャラクターは、演じているんですか?」


俺は一番気にになっていることを率直に聞いた。


 


「今の質問は40点だね。答えはYESだね。」


理は自分の質問に対して、しっかりと受け答えをしてくれた。


 


しかし、俺の知りたいのは、理は本当の狂人であるか?


正直、腑に落ちずに曇った表情になっていた。


 


「おちょくっているつもりはないけどさ。君が本質的な質問してくれないからだよ。


しょうがないな。正解をしゃべってあげるよ。」


理の話している姿を見ていると、少し知的な所が見え始めてきて、不気味に感じ始めた。


 


「私は、世間一般で言う狂人だよ。


ただね。常識は知っているつもり。


例えば、人間の子は性行為で生まれ、性行為は男女間で特別な意味をもっていることもね。」


自分について冷静に語る理のことが怖くなってきた。


 


今の話を聞いて、あの時のセンシティブな話題はわざと引き出したのかと思った。


 


「ちょっとまってくれよ。あの時の話はわざとか。」


俺は少し声を荒げた。


 


「もちろんだよ~。


だって、ひみ民も豆民も求めている話じゃん。


エンターテイナーって、求めているものを用意する仕事でしょ。」


理は、当たり前のように語っており、冷静に話している姿が機械を思い浮かべてしまう、


 


俺は、本当の狂気に触れているせいか、声が出なくなりそうだった。


 


「では、常識を知っていながら、どうして世間から離れている行動をするのですか?」


恐る恐る口を開いた。


 


「私が、頭のおかしいVを演じている理由はね。


みんなにさ、笑顔になってほしいからだよ。


笑いって世界を平和にする最高のツールじゃん。


そのためなら、処女も犬にだって捧げきれるし、リアルに右腕をさしあげることもできるよ。」


機械的に話していた理が、いきなり目を輝かせながら言った。


 


俺は、理 環の本質をほんの少しだけ理解してしまった。


 


純粋無垢な理は、ただ人を笑顔にしたいという理由で狂人を演じ続けている。


その笑いに対して、真っすぐで、キラキラとして、ただ純粋に求めている天才の姿は、凡人である俺には異常に見えてくる。


 


 


「ひみ様にも話していない本当の私を理解してもらえたと思うから、本題であるひみ様についていこうかな。」


純粋無垢な狂人の理は、卑弥呼について話し始めようとした。

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