幻想ノ四

幻想ノ四


 鬱つつな夜は悲しみの連鎖が……もういい。


 テルスはニケに命令を下す。


「ニケ……奴らを撃ち殺して来てくれ」


「了解です。ご主人。ニケは必ずしや奴らを殺してきます」


 ニケは猫のミミを揺らして、任務を成功させる。ために尽力する。


 奴らみたいな屍の兵器グールを頬っておくことはできない。


 必ずに殺(や)らないといけないんだ。


 全ての鈴空の夜空は暗刻の調べを呼び覚ます。


 軟弱な人間どもに鉄槌を喰らわせないといけない。


 理想を実現するためなのだから、このくらいの現実は受け止めてもらわないと。


 青い紫がかったセミロングのヘアを持つ、テルスアグナは理解を求めていた。


 伝承に残ろうとしても、残りきれない哀れな子羊がいつからなとテルスは考えていた。


 ニケは忠実な僕だ。


 僕のために尽力してくれる。


 そのためにニケに何ができるのか……それを考えたい。


 ……このくらいでは巣に戻ってしまうか……でもそれなら焼き払えば……


 テルスは、ライターを手に取り辺り一面に生えている草原に燃えカスとなる様に……木を沢山放ち……木たちが輪唱を開始する。


 木たちは動きだして火に包まれながら、辺り一面を屍の兵器に向かって、取り囲む。


 屍の兵器たちは抵抗する。


 だが、それでも木と林と森の取り囲みが成功する。


 そしてテルスはライターで火を点ける。木と林たちに…………


 ボォッ!!! 燃え上がる一面が燃え上がる。燃え上がり、グールたちが…屍を乗り越えようとする。


 煙台の炎がくすりくすりと近くによってくる。


「くすりいいいいいいいいよこせええええええええええええ」


「おなかすいたあああああああああああああああ」


「しぬしぬしぬ……しんじゃうよおおおおおおおおおおおおおおおおお」


『黙れ』


 剣を拾う。


 そのまま投げつける屍の兵器たちに。


 その出立は、武勇のナイフ投げ使いのようだった。


 伝説の破壊者なのか? テルスは……


 そしてそこにある人物が到着した。


「テルス!! やってるな……これ差し入れだ…」


「魚雷(アルト)さん。いつもどうもです……いつもいつも重ね重ね……」


 涙を流していた。テルスは、男なのか女なのかわからないその容姿から想像もできないように、テルスはアルトに感謝していた。


 その悠久の調べを推定することをニケは放棄していた。


 ニケはこうなるくらいなら自滅を選ぶと確信していた。


 だがテルスが『俺と共に世界を正さないか……?』と誘ったのだ。


 だから自分に世話をしてくれた。毛づくろいもしてくれた。ごはんをくれた。もうこれだけでテルスに依存するしかなかった。テルスがいないと生きていけないと願うのだニケは。


 心を預ける行為を否定するわけではない。


 そんな途轍もない義務感が生じたテルスとニケの間に。


 ニケはそんなことをどんよりとした暗い青い空の濁った空気の中で考えていた。


◇☆●


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