第25話 第三のプレイヤー

一人の女性がパソコンの前で頭を抱えていた。

「うわぁ、エキシビションで練習しようとしたのにフージンとマッチングされちゃったよ」


グラスこと濱口さとこは何となく面白くなかった。


「…まぁ決勝で当たった時の練習になるかな?一番倒したいのはオニオンなんだけどなぁ」


グラスは大剣で闘うスタイルで攻撃と防御が抜きん出た、速さを捨てた重装備だった。

攻撃が当たれば致命傷を与え、ほとんどの攻撃のダメージは微小。


だがオニオンはずっと離れて闘うスタイルのため攻撃を当てるのも一苦労。

止まってると思い近付くと魔法を撃ってくるやり方も腹が立ち、どうしても勝ちたかった。


しかしグラスはオニオンが苦手と同時にフージンも苦手だった。

細かい動きで攻撃してくる格闘スタイル。

受けるダメージは少ないが手数が多く体力はどんどん削られ、攻撃も回避される。


今のスタイルに限界を感じ、変えた方がいいのかもと迷っている。



試合開始


「あっ、すぐ来た!」

フージンはダッシュ移動で近付いてきた。


「…このっ!」

剣を大振りするとその攻撃はヒットし、フージンは吹っ飛んだ。


「あ、あれ?当たった…。よし!」

グラスは追撃を試みる。

が、それがいけなかった。


ダウン状態から復帰したフージンは回り込むように移動する。

それはグラスの攻撃範囲外の為、フージンの方向に動いていくしかなかった。


「やばい、やばいよ、これ」

すでにフージンは真横と言ってもいい場所に移動しており、そのまま突っ込まれた。


ダメージは少ないがフージンは一旦離れ、更に回り込むように移動した。


「えぇーい!」

大剣を振るが空振り、その隙をつくようにフージンはスキルを使ってくる。


その後はなす術が無くグラス自身もモチベーションを無くし、負けた。



「やっぱダメかも…。でもやり方変えるにしてもどうしたらいいんだろう」

さとこは迷っていた。


スマホを手に取り掲示板、攻略サイトとチェックしてみる。


「……斧だと威力は落ちるけど攻撃速度は上がる。ん?盾?大盾だと盾をそのまま武器に出来るの?」

先程のフージンの攻撃も盾があれば防ぎきれたかもしれない。


「ちょっと試してみよう。……大盾、これね」

基本スタイルはガードからのシールドバッシュ、その場から動かず相手に近付かせて攻撃させてからの反撃が定石。


「…これ、いいかも。元々重装備だし、でも魔法にはやっぱり弱いのか、そこだよなぁ」

オニオンが使ってくる魔法への対処に苦難していた。

思えばチーム戦はオニオンの魔法に負けたようなもの。


「魔法使ってくる人とマッチングされないかな、試してみたい」




綾の自宅


「…グラスって人、厄介だった」

「やっぱり?」

「硬くない?相当攻撃したよ。一撃が強いし」

「あの重装備だもん」

「そこの対策も練らなきゃいけないのか。やっぱりこのエキシビションいいわね!どんどんやろう!」

「…あ、あまりやらない方がいいよ。あれがアレになるから」

「あんた、そういうの下手くそよね」

「正直者だから」

「正直者は自分ではそう言わない」


「僕も身につけたスキル試したいからエキシビションやろう」

「いや、私とやればいいじゃない」

「やだ」

「ちっ」

「決勝で会おう」


綾は気になっていた。

「…ところであんた、今日どうするの?帰るの?」

「ん?んー……」

綾の問いかけに貴俊は上を向き、悩む素振りを見せた。


綾はすかさず貴俊が持って来ていたカバンの中を見た。

「…着替え持ってきてるじゃないのよ!」

「見ないでよ……」

「へぇー、泊まる気で来たんだ。へぇー」

「多分捕まって逃げられないだろうなと思って」

「本当に捕まえてやろうか?あ?」


「……あれ?グラスさんとマッチングされた」

良いタイミングで話を逸らせる事が出来た。


「え?あんたも?」

「この人もイベントに向けてエキシビションやってんだ」

「皆そうしてるのね。私ももっとやろう」


画面を見てると貴俊は一つ疑問を感じた。

「……ん?綾」

「ん?」

「さっきこの人大盾だった?前は大剣だったと思うんだけど」

「え?さっき大剣だったよ?」

「じゃあ色々と試してるのか」

「…私も魔法試そうかしら」

「やめた方がいいと思うよ」

「何で?」

「………」

「よし、試そう」

貴俊が黙ったので有効だと判断した。



オニオンはグラスと闘うが一歩も動かないグラスに魔法を連発するだけで勝てた。


「……何を試してたんだ?」

「何が?」

「いや、盾を構えて一歩も動かなかった。怖いな、なんか」

「ダメージ量を計算してたとか?」

「可能性あるね」




さとこの自宅


「……魔法に対してはやっぱり弱いな、何とか対策取れないかな」


さとこは貴俊の予想通り、単純に魔法ダメージの確認をしていた。


「……ん?あっ!もうこんな時間じゃん!」

時間は午後十一時を過ぎていた。


「やばいやばい、お風呂入って寝なきゃ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る