第15話 マンドラゴラの収穫

 お、アンタが手伝ってくれんのかい?


 助かるよ、結構な力仕事でねえ。


 え?

 ああ、そうだよ。

 やってもらうのはマンドラゴラの収穫さ。

 ここに来る前に話は聞いてんだろ?


 アンタ経験は?


 あ、そう。


 いやいや!

 大丈夫大丈夫、素人さん大歓迎さ。

 誰だって最初は素人だからね。


 ホラ、これがマンドラゴラの鉢植えだよ。


 昔は畑に直接植えてたんだけどね。

 今は収穫する時の手間を考えて、こうやって鉢植えにしてんのさ。


 マンドラゴラについては何か聞いたことあるかい?


 そうそう、土から引き抜くと大声出すって奴。

 だから、不用意に抜かないようにね。

 耳をやられちまうよ?


 大丈夫大丈夫、耳栓なんか要らないよ。

 まあ、心配ならしてくれていいけどね。


 お、何だい用意が良いね。

 やる気のある子は大歓迎さ。


 やり方は分かるかい?


 犬?


 いや、まあそういう俗説があるのは知ってるけどね。

 そんな方法はしないよ。


 そりゃそうだよ。

 犬だって耳はあるんだ。人間よりよっぽどデキの良いのがね。

 それなのに犬に引かせたら犬が死んじゃうじゃないか?


 当たり前だよ。

 当然、犬なんか使わない。

 かわいそうじゃないか。


 それに犬に引かせるんなら、アンタみたいな臨時雇いなんか頼むわけ無いだろ?


 え?

 声を出せないよう抜く前に首を斬る?


 いや、収穫前に傷つけたりはしないよ?


 そりゃそうさ、値が下がっちまうじゃないか!


 いや、収穫した分をウチで加工までするなら、もしかしてそう言う方法もあるかもわかんないけどさ。

 うちは収穫したら干すだけで、その後は薬師に卸すからね。

 薬に加工するのはアッチの仕事だから、下手に傷つけたりできないんだよ。


 そうだよ?

 だから傷つけるのはナシ!


 何、方法は簡単さ。

 まずはこのマンドラゴラの鉢を荷車に乗せとくれ。


 そう、全部さ。

 結構な量だろう?


 ああ、まあこれが一番の力仕事なんだけどね。


 ああ、まだ他にも力仕事はあるよ。

 まあそれはアッチで説明するよ。

 まずは、これらを荷車に乗せとくれ。

 落として鉢が割れるとマンドラゴラが叫んじゃうかもしれないから、落とさないように気を付けてね。



 はい、じゃあこの荷車をあっちの川辺まで運んでくれ。

 アタシはこっちの荷車引っ張ってくから、後を付いて来て。

 そんなに遠くないけど、足元が悪いから気を付けてね。



 はい、じゃあ今からマンドラゴラを収穫しまーす!

 何、大したこっちゃないよ。

 このマンドラゴラを鉢ごと川に沈めるのさ。


 ほら、こうやって川の水の中に・・・


 ドボンッ


「ゴボゴボゴボッ

 ゴヴァアアアアアアアアアアアアアアアッ・・・・

 ゴボッ・・・ゴポッ・・・・」


 はい、静かになったらおしまい。


 水の中に沈めたまま鉢から引き抜いて、あとは叫び終わるまでに付いてる泥をそのまま洗い流してね。

 鉢もついでに中に残ってる泥を洗い流して、それからそっちへ置いて、マンドラゴラの方はこっちのカゴへ・・・


 どうだい?

 簡単だろ?


 水の中じゃ上手く叫べないのさ。

 叫び終わるまでは水から出すんじゃないよ?


 よしよし。

 あと鉢はまた使うから割らないようにね。

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