さぁ、もう一度君と。

@uguisu_

第1話 失意の中、出会ったのはー。

「先生、す、好きですっ!!」

「ごめん。オレ、これでも教師だから。気持ちだけ、ありがとね。佐東、卒業おめでとう。」

私の高校生活と初恋はこうして終わった、はずだった…。まさか、あんなことになるなんて―。


3月18日、 「今日は高校の卒業式だー!!」

なーんて、正直この時の私には、そんなのどうでもよかった。それよりもずーっと大事なことがあったのだ。そう、何を隠そうわたし、佐東 星(さとうせい)は、ずっと前から好きだった副担任の鷹地(たかち)先生に告白するのだ!

「先生、す、好きですっ!!」

「ごめん。オレ、これでも教師だから。気持ちだけ、ありがとね。佐東、卒業おめでとう。」

-結果は惨敗。私は悲しくて、切なくて、悔しくて、でも先生を嫌いになんてなれなくて…。帰り道、私の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。それでも“これ以上の不幸なんてない”と自分を奮い立たせ、家へと歩き出した。



-“あれ、私なんで寝てるの?しかもここ、どこだろ?”

「おにぃ?」

「星?!目が覚めたのか!よかった、ほんっとにかった。」

しばらくして私は、卒業式の日の下校途中に無免許運転の車にはねられ、4日間昏睡状態だったことを知った。幸いにも目が覚めてから怪我の回復は早かった。しかし私は、事故の後遺症で記憶障害になってしまった。事故の日のことも学校のことも何一つ覚えていない。分かるのは家族のことだけ。記憶を失うことは、私にとって『わたし自身』を失うことのように感じた。

1ヶ月半後、私は無事に退院した。献身的に支えてくれた兄のおかげで、私は普通の生活にもどることができる状態にまで回復した、あくまで身体は…。でも、心だけはどこかに置いてけぼりなってしまった。大学になんてとても行く気にはなれなかった。だからといって働けるほどの体力もまだない。ただ息をして時間が過ぎる日が何日も続いた。そんなある日、いつものように新聞を取りにポストへ行くと、ある男性がこちらを見ていた。

「あの、うちに何か?」そう聞くとその男性は、「久しぶり、佐東」と言った。私はその男性が誰だかまったく分からなかった。でも、何故だろう。何だか懐かしいような、嬉しいような、そんな感じがした。どうしても気になって私は聞いてみた。「久しぶりってことは、どこかでお会いしたことがあるんですか?」すると男性は、少しだけ笑いながらこう言った。「もう忘れちゃったの?鷹地だよ。高校の時副担だった。」「退院したって聞いて、様子見に来た。」私は、その言葉を聞いた途端に家に駆け込んだ。






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