第20話 話し合い2

シンさんが話し合いに加わったことで、場の空気がリセットされた。

全員がソファーに座り、ちゃんとした話し合いって雰囲気。

支部長とシンさんが一緒に座っているが、シンさんがデカイので3人がけなのに2人の距離が近い。

ニアもビビっているのなら端っこなんかにいないで、もっと俺にくっつけばいいのに。

昨日のレイちゃんみたいに腕に抱きついていいのよ?

Win-Winの関係になれると思うんだ。

俺もビビってるし。


「では、これから同じ課で働く同僚同士、自己紹介をしましょうか。…シンは見た目は怖いですが、中身は優しいので2人共そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。はい、じゃあシンからね」


気は優しくて力持ちタイプなのかな?

それなら少しは安心できるな。


「ミツイ・シンだ。お前達の面倒を見てやれと言われてる。いいか?生半可な気持ちで務まるほど異世界攻略課は甘くない。それに、相応の力が無ければ無理だ、死ぬぞ。覚悟も力も無く、自分には無理だと思うならすぐに辞めろ、以上だ」


ふむ、支部長の言葉を信じるなら少しぶっきらぼうな口調だけど脅してるって感じより、心配してるって感じなのか?


「ハァ,,,,まぁいいです。次は黒石さん、お願いします」


次は俺か。

真面目な感じはあまり得意じゃないんだよな。


「昨日、使徒になったばかりの黒石幸です。正直、急に働く事になり、まだ何もわからないので生半可な気持ちだと思いますが、無理だと判断して辞めるまでは精一杯頑張りたいと思っています。シンさんにはかなり面倒をおかけすると思いますが、どうぞよろしくお願い致します。俺も死にたくないですし、ニアも死なせたくないので、シンさんから見て無理そうなら教えていただけたら助かります。あ、働き始める前から無理っていうのは無しで。それと、理由に納得できなかったら辞めませんよ」


とりあえず、正直に今の気持ちを話してみた。

やる気はあるけど、死ぬくらいなら安全策を取るわ。

そもそも甘くないとか死ぬぞとか言われても、ピンとこないんだよ。

試用期間で駄目ならそれでいいでーす。

ニアも死なせるくらいなら無理矢理にでも辞めさせるわ。

どんな反応が返ってくるか青髪コンビの様子を窺う。

が、特に変わらず。

支部長はニコニコしてるし、シンさんは腕を組んでの無表情。

支部長はともかく、シンさんには文句の1つでも言われると思ってたんだけど。


「うん、なるほどね。最後はニアちゃんだよ」


時間が経つほど駄目になるうちの女神様はちゃんと自己紹介できるのか?

最初は仕事ができる女って感じだったのに…。


「は、はい。アヤネ・ニアです。協会で受付嬢をしていたので、攻略課の仕事内容はある程度は分かっています。攻略課で働けると分かり浮かれていましたが、私の力で攻略課の仕事をやっていけるかどうか分かりません。コウと同じく、無理だと思うまでは精一杯頑張らせていただきます。シンさんが無理だと判断したら教えてください。コウと2人で相談して、どうすればいいのか考えます。ご迷惑を御掛けしますが、どうぞこれからよろしくお願い致します」


嘘だろ…ニア…。

ビビりすぎて珍奇なキャラが頭から吹き飛んだのか?

それは素のニアなのか?それとも受付嬢キャラのニア?


「コウ、私もあなたを死なせたくないから。もし攻略課でやっていけなくても、2人で力を合わせて成長していきましょ」


いつの間にか俺への信頼度が上昇してたのかな?

なにやらいい雰囲気だし、イベント画像の回収しなければ。


「オッケー、ニア! さぁ!カモン!!」


腕を広げ、ハグを待つ。

2人の絆を確かめあおうではないか!


「カモンじゃないし。あんたそういうとこほんとキモいから。早く直しなよ」


この感じならハグくらいならいけるかと思ったが失敗。

しかもエセダウナー系に戻ったみたいだ。

でも、緊張がほぐれたみたいで良かったわ。


「うん、軽い自己紹介で良かったんだけど、2人の考えが聞けて私は嬉しいよ。2人共、最初はそのくらいの気持ちでやってくれれば私も安心だ。死ぬ気で頑張る、なんて言う子は大抵無理しすぎて死んじゃうからね。さてと、問題があるとすれば…このバカ息子がっ!!」


話の流れ的に良い感じにいくと思ってたら、爆弾ブチ込んできたな支部長。

息子の顔にグーがドンしましたよ。


「女性の前で変に格好つける癖を早く直せ!自己紹介をしろと言ったのに、あの子達の不安を煽ってどうするんだ!あの子達が力をつけて、問題無く働けるようになるまで、死なないように面倒を見るのがシンの仕事だろうに!レイ様にあの件に関する記憶と報酬を失くしてもらいたいか!?紹介した私の顔を潰すつもりなのかお前は!?そんなだから、100歳を超えても恋人もできないんだ!」


「ち、違うぞ、親父!別にアヤネさんが可愛いからって、緊張したわけではないんだ!ちょっと先輩の威厳ってやつを,,」


「言い訳無用!だいたいお前はいつもいつも,,,,」


支部長が激おこ、説教開始だ。

シンさんが少し小さくみえるね。

目の前の筋肉が、女性に縁がない三桁超えの童貞かもしれないと思うと、途端に可愛らしく思えてくる不思議。

もしも、薔薇の人だったら恐怖が倍ドンだけど。

説教が長そうなのでニアに小声で話しかける。


「なぁ、ニアはシンさんが支部長の息子だって知ってた?ぶっちゃけ似てなくね?」


「いちおーは。娘さんは綺麗だし、支部長にちょっと似てるんだけどね…。急に目の前で力自慢なのか物壊しだすのさ、あの人。自前の林檎とか、協会のペンやドアノブとかさ。弁償はするけど。陰で破壊シンとかあだ名つけられてるよ。アブない人って噂だったけど、この状況見てるとなんだかね…」


最初の威圧感はどこへやら、すっかりしょぼくれてるもんね。

格好つけたつもりの年下の目の前で、父親に色々バラされながら説教されるとかキツいだろ。

今も家でギャルゲーやってるのバラされたし。

支部長、タイトルまで言うのはやめてあげて。

ニアがドン引きしてるよ。

お兄、ちゃんとしよ!や獣人育成計画-しつけのすすめ-は年齢制限高めなんじゃないですかね…。

性癖までバラされたよ、合掌。


「親父っ!もう勘弁してくれ!俺が悪かったっ!これからはちゃんとするって!な!?アヤネさんと黒石君にも謝る!」


「まったく…最初からちゃんとしてればいいものを,,。2人共、お見苦しいところをお見せして申し訳ない。シン、2人に謝罪を」


別にいいのに。

むしろちょっと格好つけただけで色々バラされたシンさんに同情するわ。


「2人共すまなかった!ちょっと緊張して、格好つけてしまったんだ!本当は君達の事情や力も知ってるから、攻略課にようこそと思っている!君達が成長するまではあまり危険ではない、無難な異世界を攻略するつもりだ。そもそも俺が面倒を見るのだから君達が死ぬことはないだろう!安心してくれ!これからよろしく頼む!」


『よろしくお願いします…』


「よし、じゃあ後は雇用するにあたって細かい話をしたら終わりで。終わったら黒石さんはシンと行動してもらおうかな。一緒に買い物でもしながら攻略課の話を聞いたり、交流を深めてください。ニアちゃんは仕事の引き継ぎで」


シンさんと2人きりっすか。

神界のエロ関係の店を聞かねばならんな。

神界来てから1人playもご無沙汰でしたからね。











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