　その部屋には、まるでおとぎ話の中のプリンセスのような、美しく清純で、愛らしい少女の絵が飾られていた。

　マルデク総統の異母妹、アンジェリーナの写し絵だった。

　隅々まで磨かれ、長い間、主(あるじ)が再び帰還することを待ち望んでいた部屋。

　部屋には前の主に恋をし、この部屋に住み着くようになった、異世界からやってきた精霊がいた。それ故、新しい主の出現に、精霊・夢魔は最初は驚き、悪さをしようとした。

　しかし前の主の美しさにも負けない新しい主の美しさに、すぐに魅了され、夢魔は心から新しい部屋の主を歓迎するようになった。

　異世界からやって来た夢魔は、まだ幼く、（とは言っても、具現する姿は青年だったが）、この世界のこともまだあまり知らなかった。

　夢魔と呼ばれる精霊は、ほとんどが、神の領域に存在する集合意識体から脱走してきたエネルギー体で、高次元の存在ゆへ、この世界では超常現象と共に現れることが多かった。

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