第42話 想い遙かに~滅びの子と運命の恋人

 ハンネスは、エルフィンがアメリアの策略により、マルデクへ連れ去られたと知ったとき、アメリアへの怒りとエルフィンへの恋慕で、こころが張り裂けそうになった。それは“滅びの子”としてこの世に生を受けたハンネスには、危険な兆候だった。


 ハンネスが“滅びの子“と呼ばれる、特別な宿命を背負った者であることを知る者は少ない。知っているのは、ハンネスの父、玄武が反逆者としてユリウスの手で処刑されたあの日、あの流血の惨劇の中から赤子のハンネスを救い出し、シャンバラの門をくぐり抜けたジャド師と、そのことを伝えた、ハンネスの運命の恋人であるエルフィンだけである。


 本来、運命の恋人に出会うことは、まれなことなのだが、ハンネスとエルフィンには、そのまれなことが起っていた。

 それゆえ、本来は変性しないはずの、聖なる魂を持って生まれたエルフィンも、女性へと変性し始めたのだ。


 ハンネスはすぐにでも、エルフィン救出のためにマルデクへ行きたかった。

 しかしそれを、ミカエルの力も借りて力づくで止めたのは、ジャド師だった。

 このときになって初めて、ジャド師はハンネスの出自をミカエルに明かした。


「ハンネスの母親は、マルデク総統ユリウスの亡き妹、アンジェリーナ姫なのです」

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