第18話 第二の襲撃
翌朝。
今日はどうせ土曜日で学校は無い。
何もなければ朝は暇だ。
だから何も考えず二度寝を決め込んでいたのだったが……
『緊急放送です。道路側の窓から教室内廊下側へ移動し、机の下等に隠れて下さい。繰り返します。道路側の窓から教室内廊下側へ移動し、机の下等に隠れて下さい』
何事だ、そう思って思い出す。
そう言えば先輩が言っていたな。
窓もカーテンも念の為夜のうちにしっかり閉めてある。
だからとりあえず掛け布団を抱えてベッドの影、窓の反対側へ。
地響きのような音が聞こえる。
音だけでなく実際に震えている。
家具が振動しているしガラスも震えている音がする。
外で何かが潰されるような音もする。
この前より大型の怪獣がやってきたような雰囲気だ。
しかもここから近いような気も……
ドドドーン! ドドドーン! ドドドーン! ドドドーン……
爆発音らしき音が何回か聞こえる。
そのたびに窓ガラスが震える。
カーテンだけで良かっただろうか。
段ボールか何かを貼っておくべきだったろうか。
でも先輩達はそこまでしろとは言っていなかったな。
ウゴオオオオオオオオオオオッ!
怪獣の咆哮らしき声が聞こえた。
すぐ近くに感じる。
大丈夫だろうか。
そう思いつつベッドの影で布団をかぶって待機。
急に静けさが襲ってきた。
先程まで聞こえた何かを踏み潰す音も聞こえない。
状況は終わったのだろうか。
耳を澄ませて少しでも状況を確認しようとする。
『一斉放送です。戦闘は終了しました。怪我をしたり部屋に損傷があった場合は学内ネットワーク、ネットワーク機器が損壊している場合はインターホンの非常ボタンで連絡をお願いします。繰り返します……』
終わった訳か。
この部屋はどうも大丈夫だったようだ。
俺は窓際へ行き、カーテンを開ける。
黄土色の何かがいた。
それも割と近くに。
場所は学校の建物から道路を挟んだ反対側、河原の中だ。
おそらく形は前回の地竜と似ていたのだろう。
今は焦げたり血が出たりしている単なる塊にしか見えない。
それでも大きさは前の奴より大きい。
前のがワンボックスカーくらいだとしたら、大型バス……いや、もっと大きいか。
なお血の色は赤色だ。
いちおうこれでも生物らしい。
状況から見てどうやら山奥方向から学校の方へとやってきたようだ。
大きさ的に道を歩けず、川の流れている部分を中心とした谷を歩いてきた模様。
それでも両岸に生えている灌木等をガンガンに潰して来た感じだ。
それにしても近い。
女子寮の一番近い部分で50m以下だろう。
ここからだって100m無さそうだ。
女子寮の方は大丈夫だろうか。
この部屋でも大丈夫だったし、おそらく問題は無いと思うけれど。
そんな事を考えた時、スマホが振動した。
何かメッセージが入ったようだ。
続いて更に振動。
どうも何件か入ったようだな。
スマホを拾い上げて見てみる。
一通目は茜先輩だ。
『こっちは被害なし。緑も大丈夫と連絡あり。また夕方1730に緑の研究室で夕食会予定』
まあ先輩達は大丈夫だろうとは思っていたけれど、一応ほっとする。
そしてまた夕食会か。
何か新しい情報でもあるのだろうか。
それとも単に顔見せ会みたいなものだろうか。
いずれにせよ断る理由は無い。
色々世話にもなっているし。
だから了解の返信を打っておく。
二通目は塩津さん。
『ちょうど私の部屋の真ん前! 怖かった! でも大丈夫。窓ガラスも無事。ちょっと話をしたいけれど大丈夫?』
確かにそれは怖かっただろうなと思う。
この距離でも充分怖かったし。
なお俺の予定なんて勿論何もない。
山奥の学校内で授業も無い状態だから。
『夕方までなら予定は無いけれど』
メッセージを打ったらすぐ返答が来た。
『喫茶室、10時にどう?』
『わかった』
そう打って時計を見る。
現在の時間は9時40分。
ゆっくり洗面して着替えて行けばちょうどだな。
それにしても何の話だろう。
洗面歯磨きをしてひげをそった後、着替えながらカーテン越しに外を見る。
何か色々と人が出てきている。
迷彩服姿もここの制服代わりである黒い服も。
黒い服を着ているからと言って生徒という訳では無い。
あの黒い作業服は先生や研究者も持っている。
ところであれの調査はどうやってやるのだろう。
どこかへ運んでというのは大きすぎて無理そうだ。
ある程度カットしないと運ぶ方法が無さそうだし、運び込む場所なんてのも思いつかない。
それとも全体はあそこで検分して、あとは他で調べるのだろうか。
どっちにしろ解体して持ち去らないと、腐って酷い事になりそうだ。
そう言えば前回の怪物はどうしたのだろう。
まだ学校が無いので先生や他の生徒とも情報交換が出来ていない。
課外活動を今日もやるなら、その時に清水谷先生に聞いてみるか。
それとも既にネット等で発表されているだろうか。
ズボンをはきながら時計を見る。
いつの間にか分針が50分を過ぎていた。
ゆっくりしすぎた。
俺は急いで服を着て、もう一度鏡を見て格好を確認してから鞄を持って外へ。
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