第29話 【あとがき】

 はじめまして。著者の高階泰河です。

 まずはお礼から。この度は部誌を手に取っていただきありがとうございます。また、勉学や部活に忙しいなか、拙作をお読みいただき心から嬉しいです。

 いかがでしたでしょうか?

 そこそこだったよ。つまらなかったわ。

 色々な感想があるかと思いますが、そのどれもが著者にとっては未知な反応ですのでドキドキしています。言い訳がましいのですが処女作ゆえ読みにくい点が多々あったかと存じます。しかし、少しでも楽しんでいただけたようであれば筆者として望外の幸せでございます。感想は校内メールで随時受付中です。お待ちしております!

 本作品は清峰高校文芸部部誌『薫風』に掲載予定のものです。予定という表現になってしまうのは部誌に掲載するかまだ審査をしてもらっていないからです。通常、部誌は部長である先輩が編纂を担当し、掲載不掲載に関して全ての権利が委ねられています。ですので先輩の眼鏡にかなわなければ、もしかしたら日の目を見ることもないかもしれません。するとこのあとがきは単なる独り言になってしまいますね……。

 執筆の動機は単純です。個人的な経験を小説にアレンジしたいという思いもありましたが、それよりも部員たちの熱量に感化されたところが大部分を占めます。これまで文芸部では諸般の事情で部誌の発行が滞っていました。しかし、一人の部員の熱い思いでどうにか作品を取りそろえ再開できることになりました。それが誰なのか。作中にも何度も出てきましたし、勘のいい読者の方ならお気づきかと思います。きっと九月の文化祭では彼女の喜ぶ姿が見られるでしょう。

 さて、個人的な経験といえどこの物語は完全な事実ではありません。あくまでフィクションです。現実の姫乃樹は思っているほど内気ではないし、文彩先輩はもっと優しいです。そもそも本人を特定されないように名前も変えています。だから文彩先輩のS性に期待して部室を訪れてもダメです。よって、登場人物とモデルを照合しようとする試みは控えていただければと思います。

 その他場面の詳細もモデルへのインタビューが行えなかったところは想像で補っています。そして誤った描写、解釈や説明の齟齬は全て筆者の責に負うところです。もしもご意見があるようなら筆者をお叱りください。

 話は変わりますが、部員の一人からびっくりすることを聞きました。本をあとがきから読む人がいるんですね。むしろあとがきから読む人はかなりの割合だとか。知らなかったです。

 あとがきは読了後に読むものと思っていたのでうっかりネタバレを書きそうになりました。これも先入観ですね。なのでネタバレは書かないように、本筋には触れないようにします。

 しかしながら、あとがきから読む人がいるなら、あとがきから書いてもいいと思うのは天邪鬼な考え方でしょうか。ニュアンス的にはまえがきです。そうして今、本編を中断して先にあとがきを書いています。

 本編はちょうど真ん中らへんに到達しました。大元の展開は書き出していますから間に合いはするでしょうが、きっと先輩が知ったら怒るでしょう。サボるなんて見損なった、と罵られることはないでしょうが……。でもこれなら確実にネタバレは避けられます。なにせ本編が未完成で、著者にとってもどんな言葉を紡ぐのか霧のなかなのですから。

 あとがきから着手した理由はもう一つあります。作劇上の課題が山積しているのです。実のところ修正点はたくさんあります。

 部員たちを揶揄したような表現や誤字脱字、意味の取り違えは先輩が校閲してくれるとして、重大な問題点があるのです。この物語のなかでの真実、すなわち、編集長である先輩本人に先輩への想いをどう隠すか……なかなか答えが出ません。こればかりは先輩には相談できないので、鏡に相談したいと思います。鏡は神楽が好きなので(個人情報大丈夫だろうか?)きっと協力してくれるはずです。そうすると今後は鏡が、神楽への想いを勝手に書いたことに怒るかもしれませんが。いずれにせよ考える余地はたくさんあります。


 紙面が限られてきました。この場を借りてお礼を。

 挫けそうになったとき叱咤激励してくれた神楽月璃さん。思うように小説の原稿が進まなくてもどこまでも優しいまなざしで見つめてくれた姫乃樹みぞれさん。書体や構成にアドバイスをくれた美竹星來さん。反目することもあるが根本的にはいい奴の鏡研一郎さん。そして霜月文彩先輩。先輩は全身全霊をかけて俺を治療してくれました。みんなのおかげでここまで来られました。ありがとうございます。

 先輩が最初に提示した『恋愛小説』は書けているでしょうか。まさかあのコンセプトがまだ生きているとは。そして、それを書いている自分がいるとは。日記の内容に苦戦していたことが遠い過去のように思われます。

 ところで冒頭に美竹がいっていたフォントのことがありますが、本編やあとがきはどのようなフォントが適切なのでしょうか。まだ思いつきません。

 それからもう一つ。タイトルが未定です。候補はあるのですがどうもしっくりきません。ですので今は暫定的にこうしておきましょうか。

 『無題のドキュメント』

 人は見た目がなんとやら、神楽がいっていました。あのときは文章のこだわりなんてどうでもいいと思っていました。それが短期間で変わるものですね。

 タイトルはみんなで決めたいと思います。今度は喧嘩にならないようによく話し合って穏やかに取りまとめたいです。

 が……俺たちのことです。あーでもない、こーでもないと侃侃諤諤の論になるでしょう。でもそれでいいのです。だって、それでこそ俺が入部した新生・文芸部なんですから。

 執筆の経緯、謝辞……もうこれで述べることはすべて終えました。意外に大変ですね。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。いい気分転換になりました。そろそろ本編に戻ります。

 最後に先輩の言葉を置いてお別れです。

 文は人を物語る――。

 俺の物語はこれで終わりです。俺の言葉は自分自身を物語っているでしょうか。

 またどこかでお目にかかれれば、と思います。

 それでは、また会う日まで。ありがとうございました。

《了》

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無題のドキュメント 佐藤苦 @satohraku

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