世界最強で最弱な幼なじみ

ネルシア

世界最強で最弱な幼なじみ

ひょんなことから皆超能力を得るようになった。


私の幼馴染の能力は望んた事が実現する能力。


どんなに強い力か想像するのは難くない。

お腹すいたと思えば目の前に食べ物が。

核を無くしたいと思えばたちまち消える。

嫌なことをされた相手に死ねと思えば死ぬ。


そのせいも相まってその子はいつも両腕に能力を抑えるブレスレット、首にもチョーカーを付けている。


対して私の能力は未だ発現せず。

一切不明。

でもあまり気にしてない。

だって、その幼なじみが大好きだから。



アラームが鳴り響き、やっとの思いで止める。


ベッドから這い出し、制服に着替える。


「おはよう、ほらさっさと食べちゃいな!!」


「ふぁーい。」


男勝りな母親が作ってくれたトーストと卵焼きを頬張る。


「こらこら、ゆっくり食べなさい。」


「だってお母さんのご飯美味しいんだもん。」


やれやれと笑う父親を他所にご飯を食べ終え、歯を磨いているとチャイムが鳴る。


「いってきまーす!!」


「おう、気をつけてな!!」


「行ってらっしゃい。」


「うん!!」


玄関を開けると髪が長く、綺麗な顔立ちで尚且つ高身長。

まさに絶世の美女と言ってもいいと思う。


「おはよう、菜子。」


「う、うん、おはよう……彩絵。」


自信なさげで口ごもる菜子。

ほんと可愛い。

なんなのこの子は。


しかも……胸も……。

自分の真っ平らな胸を撫で、はぁとため息を着く。

続いて菜子の頭の高さに自分の手を持っていく。

はぁ……。

また1つため息を着く。

なんなんだろうか、この差は……。


「ど、どうしたの?彩絵。」


「いや、どうして菜子はこんなにも発育いいのかなぁって思ってさ。」


歩き始めるとそれに着いてくる菜子。


「そ、そんな……。大きいのって目立つし……いいことばっかじゃないよ……?」


「もー、それは持ってるから言えるんですー。」


うぅと困り顔になる菜子。


「おはよう。」


通りすがりのおじいちゃんに挨拶される。


「おはようございます!!」


私は元気よく返事するが菜子が私の背後に隠れるようにしかもぎゅっと腕を抱いてくる。


んんんん……心臓が持ちませんぞ……。


「大丈夫だよ、菜子。」


「ご、ごめんね……。」


学校も私と菜子は2人きり。

と言うよりも私は友達もそれなりにいるのだが、菜子はどうも上手く友達ができない。


まぁ、容姿端麗で人から見ればあざといとしか見えないからなぁ……。

男子の人気は高いけど、女子の人気は……ってやつ。

だから私がいつも無理やり引っ張って誰も来ない校舎の裏側で過ごす。


「ほんと菜子って他人に慣れないよねー。」


「う、うん……。」


「でも私は平気なんだよね?」


「だって……彩絵は小動物みたいで可愛いから……。」


「なっ!!!」


小動物と言われたのは癪だけど可愛いと言われたのはずるい。

それはずるい。


でも隣にいる菜子を見て勝てないと悟る。


「菜子には敵わいけどね……。」


「そ、そんなことないよ!!」


ぎゅっと手を握り見つめてくる。

待ってください、そんなに見ないでください。


「彩絵ちゃんは……こんな私でもそばに居てくれるし……可愛いし……元気だし……。」


……これはワンチャンあるのでは?


そんなタイミングでお昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。


「また後でね!!」


「うん……。」


放課後、私は図書委員の仕事が残っており、菜子に待っててと連絡を送ると分かった、ぶらぶらしてるね、と連絡が来た。


返却された本を戻していくと突然人が入ってきて大声で叫ぶ。


「彩絵さんいますか!?!?」


「私ですけど……。」


「と、とりあえず来てください。」


慌てた女の子に腕を捕まれ、グラウンドの方に連れていかれる。


何やら人だかりができていた。


「すいません!!通ります!!」


中央に連れていかれるとうずくまっていたのは菜子だった。


異常事態にすぐに気づく。

左手の腫れも気になるがそれよりもブレスレットが割れている。


話を聞くと野球部の打ったボールがたまたま菜子の方に行ってしまったらしい。


突然の出来事で菜子は私の名前を叫び続けたとの事だ。

誰が話しかけてもパニックでまともに話せない。


しかもそれだけでは済まない。

ブレスレットが割れたということは能力が少しだけ使えるようになってしまったということだ。

そのせいで助けようとしてくれた人に近づかないでと叫ぶと同時にけがを負わせてしまったらしい。


「彩絵……?彩絵……!!!!」


私わ見つけるなり急に走ってきて私を抱きしめる。


「怖かったよぉ……うわぁぁぁん……。」


大声で泣きわめく菜子。


「大丈夫、私がいるよ。大丈夫。」


よしよしと頭を撫でてもう大丈夫ですからと周りの野次馬を解散させる。


「ううぅ……怖いよぉ……痛いよぉ……。」


「うんうん、びっくりしたね。でも私がいるよ。ここにいるよ。」


ほんとメンタルだけは弱いんだよなぁ……。


とりあえずグラウンドから離れ、校庭の中庭にあるベンチに座り、泣き止むのを待つ。


「はい、これ。」


落ち着いた頃合いを見計らって飲み物を出す。

いつも何かあったようにと持ち歩いてる菜子が大好きな飲み物。


「ありがとう。」


震える手で飲むとやっと落ち着いた様子だった。


「ごめんね……迷惑かけちゃった……。」


「ううん、大丈夫だよ。だって菜子だもん!!」


わしゃわしゃと頭を撫で回す。


「ブレスレット壊れちゃった……。」


少ししょんぼりする菜子。


「あんまり能力は使いたくないんだけど……。」


じっと壊れたブレスレットを見つめる菜子。

すると作業服を着た男性が近づいてくる。


「どうしました?」


他人が怖い菜子に代わり私が説明する。


「おや、それは大変ですね。ちょうど良かった。学校から依頼された能力調整用の器具を直してたんですよ。ついでに直してあげますね。」


そういうと箱の中から様々なパーツや機械を取り出し、あっという間に直してしまった。


「はい、これで問題ありませんよ。」


「あの、お金は……。」


菜子が精一杯に絞り出す。


「いいですよ、お代なんて。それでは。」


去っていく男性。


やっぱり菜子の能力ってすげぇなぁ。


「あのね。」


「どうしたの?」


「私、どうしても叶わない願いがあるの……。」


急に真面目に話し出す菜子。

ちょっと怖い。


「……何?」


「怒らないで聞いてね。彩絵が私の彼女になりますようにってお願いしてるのにいつまで経ってもならないんだ。なんでだろ。」


菜子に顔をちかづける。

びっくりした様子だったけど、受け入れてくれる。


そして口付けを交わす。


「ずっと好きだったよ、菜子。」


「ふふ、ありがとう、彩絵。」


そうか、私の能力は相手の能力を使えなくさせる事だったのか。


ずっと好きだった菜子と付き合えたこと、能力が分かったことに深く感謝した。

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