再開

「ここ、こんにちわっ」


 昼の稽古前、先生が来るまでの間に準備運動を済ませようと体を動かしていると声がかけられました、先生の声とは違う声です、振り返ってみればそこには。


「えっと……ステラですか」

「う、うん、ひさしぶり」


 数日前、才能を鑑定しに行ったときにあった、青い髪に青い瞳をした女の子ステラが立っていました、森を歩くのは不慣れなのでしょうお洋服や髪の毛に葉っぱがついてしまっています。しかし何故ここまで来たのでしょうか? 頭や服についた葉っぱを取りながら僕は何か用事があって来たのかを尋ねます。


「ステラはなにしにここまできたのです?」

「えっと、あのとき、ありがとうっていってなかったから、それで」

「あのとき?」

「えっと、うさぎさんをとられてたとき」

「ああ、それなのですね、おれいをいわれたくてやったことじゃないのですが、でもいわれればうれしいものです、どういたしましてなのです」


 ステラはどうやらこの前、ドラゴ君に取られそうになっていた兎の人形を僕が取り返した事について御礼を言う為にここまで来たようです、その為に街の中をくまなく探していたとか、それじゃ僕は見つかりませんね、数日前から先生に稽古を付けて貰う様になってからは街に行きたいよりも稽古をしたい方が大きかったので。

 そもそも母さんに街に行かない様に言われてますし。そんな話をしていたら。


「おうトラ、早いのう、残さず昼飯食ってから来てるじゃろうな?」

「あ、せんせい、それはもちろんです、きちんとごはんはたべてきました!」

「ならいいんじゃて、で、そっちのお嬢さんはどちら様かね? その綺麗な装いからして、さだめしどこかやんごとなき御身分のお嬢様じゃと思うが」

「…………こんにちは」

「ステラはともだちですよ、ここまであそびにきてくれたのです」

「とも……だち?」


 先生がようやく来ました、お尻をかきながらはだらしないと思うのですが。

それとお昼ですが勿論きっちり食べております、先生は子供であれば食事をするのも修行の一環じゃて、三食しっかり食べるんじゃと言います。稽古は体力をかなり使うのでモリモリ食べてます、おかわりだってします。


 そして話題はステラに行きます、先生はステラの事をお嬢様と言います、確かに綺麗な青い髪に今はちょっと汚れてますがドレスも靴もなんだかおたかそうな物です。


 でも、お嬢様でもステラはステラです、そして御礼を言いにここまで来てくれるとてもしっかりしているお友達です。お友達だと言うと、ステラは目を丸くしてます。

 もしかして僕とお友達は嫌だったのでしょうか、そう尋ねてみれば千切れんばかりに首を横に振りました、よかったのです、嫌と言う訳ではなさそうなのです。


「そうかそうか、トラ、今日の稽古はよい、友達と遊んでくるといい、友人は大事にせんとなぁ」

「え、いいのですか?」

「折角ここまで尋ねて来てくれたんじゃ、それを稽古があるからと追い返すのは無いじゃろうて、ほれ、森でも案内してやるといい」

「おす! ステラ、もりをあんないするのです、いきましょう」

「え? ……あっ」


 先生は今日の稽古はしないと仰いました、なんだかご友人と仰った時ちょっと寂しそうな顔をしました、そう言えば先生のお知り合いには一度も会ったことが無いですまぁ、稽古が無いなら、ステラと思いきり遊ぶことが出来ます、僕はステラの手を引いて、森の中を先生が言った通り案内してあげる事にしました。


「もりってすごいね、えほんのなかでしかみたことないものがたくさん」

「そうでしょう、そうでしょう、あ、このきのみはたべれるのですよ」

「ほんとう?」

「ええ、いつもおやつがわりにたべてます、ステラもどうぞなのです」

「ありがと……あまい」


 一緒に木の実を食べたり。


「あっちにとりがいるのですよ、なまえはしりませんが」

「あ、ほんとうだ、あれはめじろだよ、めのまわりがしろいでしょ」

「へぇ、ステラはものしりなのですね」

「えほんでみたことがあるの」

「じゃあ、むこうにいる、うさぎのなまえとかも?」

「うん、あれはね……」


 木の上に立つ鳥、鳥だけじゃなくて色んな動物も見たり。


「すごいでしょう、ここはぼくだけでつくったのですよ」

「へぇ、てーぶるもいすもある、ぜんぶティグレくんがやったの?」

「ええ、もりにすてられたものをがんばってはこんだひみつきちなのです」


 ステラには秘密基地も紹介してあげました。


「お~い、トラ、嬢ちゃん、そろそろ時間じゃて、遊ぶのは終わりじゃ」

「え~、まだいっしょにあそびたいのです」

「また今度にすればよいじゃろ、嬢ちゃん、街まで送るよ」

「うん、えっと……ありがとうございます」

「儂も帰るついでじゃて気にせんで良い」

「むぅ、ではまたこんどあそびにきてくださいのです!」

「うん、またね」


 そうやって、色々遊んでいたら、あっという間に日が沈み始めていました。

先生は今は街に住んでいるそうで、ステラを送って行ってあげるそうです。

ステラとお別れするのは寂しいですけど、きっとステラの母さんや父さん達、それに姉さんもステラの事を待っているはずです。なのでまた今度遊ぶ約束をして今日はお別れなのです。


 でも、それから次にステラが来たのは、ずっと後、夏の始まり頃でした。

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