トラの本質、修行の始まり

「ティグレを高僧様のお弟子に?」

「その高僧と言う呼び方は辞めて頂きたい、今は棺桶にいつ入るか悩んでるだけの爺じゃて、出来れば名前でセンと呼んで頂きたい」

「かしこまりました、それでセン様、何故うちのティグレを弟子に?」

「儂はトラにを見た」

「センおじいさん、ぼくにさいのうはないのですよ」

「かっかっか、あんな水晶なんぞのちゃちな道具だけで、全ての才能を見抜けるなら多くの人々は生きるのにもうちっと苦労せんわい」


 センおじいさんは僕に才能があると言います、でも僕は神官様の所の水晶で調べた所、才能を持っていないと言われました、センお爺さんはあれで調べられるのはその人の成長した時の運動能力や運動神経、脳の働き、その他もろもろの身体能力等から見出される、もっとも得意な事とかだそうです。つまるところ。


「そのものの心や魂、意志や感情、そういったものに宿る才能は見れぬもの、じゃが儂は見た、トラに任侠を、誰かを助け守る意志を持てる男じゃと感じた」

「にんきょう? ですか?」


 センおじいさんが前にドラゴ君からいじめられた子を助けた時にも言っていました

誰かを助ける事はだれであろうとやらなければいけないものでは無いでしょうか。


「儂は人を見る目には自信がある、そして儂はトラに任侠を貫く為の知識と力を与えれると思う、どうじゃろう奥方」

「…………ティグレ、貴方はどうしたい?」

「どうしたいとは?」

「セン様のお弟子様になりたいか聞いてるの?」

「おでしとはなにをするのでしょう?」

「儂の得意とする事は武術じゃて、基本的にこれを教える、それと別に一般教養じゃ真に任侠を為すにはこれが重要じゃて、他にもお主が知りたいと思った事には出来る限り儂は答えようと思っておるよ」

「……ぼくじしんのことをしりたいといったら」

「儂に分かる限りの事は教えよう」


 センお爺さんのお弟子さんになれば、僕は僕の事を知る事が出来る……父さんや母さんが教えてくれない街に行ってはいけない理由なども。それに兄さんの様に僕も剣を習えると言う事なのです、それに姉さんの難しい話も分かるようになるかも知れません。


「ぼく、なりたいです、センおじいさんのおでしさんになりたいのです!」

「なら決まりじゃ、今日より、儂はトラの先生じゃて、そう呼ぶのじゃ」

「せんせいなのです?」

「うむ、先に生きた者と書いて先生じゃ、弟子になったからには甘やかしはせんぞ」

「お願いしますセン様、その謝礼などは」

「いらぬ、これは儂がしたいと言ってする事、それにお代を頂くような図々しい真似はせぬよ、まぁ、トラに助けられた命の恩返しのついでと思え」


 こうして、僕はセンお爺さんもとい、先生のお弟子さんになる事が決まりました。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「よーし、トラ、今日はいい天気じゃな、まさに稽古日和!」

「はい! よろしくおねがいします」

「返事は、押忍じゃ、トラ」

「おす!」


 お弟子さんになったその翌日の朝、早速先生はお家にやって来て僕を連れ出し稽古をつけてくれるといいました、連れ出されたのはいつもの秘密基地前。ここは大木が他の大きな木の育つ邪魔をしてるおかげで、少し開けた場所になってます。


「さてと、稽古じゃが、走り込みからかのう」

「はしりこみ?」

「うむ、山の中をひたすらに走る、というのもトラはまだ体が出来てない子供じゃ、本格的に武器を用いて教える事は今すぐには出来ぬ、故にそれまでは来たるその時の稽古に耐えうる体力を作る走り込みと武器を持たずに出来る稽古を行う事とする」

「むつかしいことはよくわかりません、とにかくはしるのですね!」

「うむ、それだけ分かっていればヨシじゃ、では体を軽く動かしてから、走るぞ」


 先生はなんか色々言ってましたが、とにかく走ればいいと言う事は分かったので

それをする事にします。ただ、走る前に肩や足、腕を少し軽く回してからの方がよいそうです、そうしないと怪我をしやすくなるのだそうです。


 こうして、僕と先生の稽古が始まりました。

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