託される刀

「これはレイピアとも違いますね……ですが、これは」

「そいつはの、西の大陸で刀と呼ばれる武器じゃ」

「カタナ? で、ございますか、いやしかし、素材ですがこれはオリハルコンですねどの鉱山でも小量しか取れませぬ貴重な鉱石、それを精錬しこの形に仕上げてこの美しき波紋、一年や二年で集めれる数のオリハルコンで作った物じゃありません」


 オリハルコンとは何なのでしょう? 姉さんなら知っていたでしょうか、何だか難しい事ばかり話しております。質屋の店主さんはじーっとそのカタナと言った物を見続けてそっと鞘に納め直しました。


「これは武器と言うより美術品の様にも見えますが、ですが、鞘、柄、鍔どれもが随分と質素に作られています、作者はこれを武器としての機能を重視したと言わんばかりです。実際、この刀身は上手く使えば、人体であれば真っ二つでしょうな」

「ま、まっぷたつですか!?」


 そんな危ない代物なのですか!? こ、怖いのです!?

 

「かっかっか、そう使えばのう、そうは使わんじゃて、して、値段は?」

「付けれませぬな、この様な代物、貴族の家宝にもあるかどうか、しかしつけるなら3000万ディルは下らぬでしょうな、人によれば更に行くでしょう」

「さんぜん?」

「これを買おうものなら、軽く家一軒といったところか? 結構するんじゃの」

「いえいっけん!?」


 お家が一軒建ってしまう程なのですか、お金の事はよくわかりませんが、途轍もないと言う事は分かったのです、そ、そんなお高いものだなんて。


「ほれ、トラにやるわい」


 ほへ? センお爺さんは店主さんからいつのまに刀を返してもらっていて、それが簡単に抜けない様に紐で縛っておきながら、僕の背中に横にして背負わせます。

 どど、どういう事なのです!? こ、こんな大層な物を受け取るだなんて。


「金に困ったら貴族に売るもヨシ、トラが使ってもヨシじゃ」

「これはだいじなものでしょう! てんしゅさんもすごいものっていってましたよ!うけとれません!」

「儂みたいな老いぼれが持ち続けるより、トラの将来に役立つ方が刀は喜ぶじゃて。すまんの店主、これが凄い物じゃって教える為に利用してしまっての、これは詫びの品じゃ、お代はいらぬ、他の誰かに売ると良いじゃろう」

「いえ、良き物を見せて頂き感謝しかありませぬ、ほほう、これは良き加工を受けた宝石でございますな、お言葉に甘えてお受け取り致します、今後とも、ご贔屓に」

「まってください、センおじいさん、おはなしをきいてほしいのです」

「命の恩人じゃて、これくらいはせんとのう、かっかっか、ほれ、商売の邪魔になる前に出ていくぞい」

「まってくださいよ、センおじいさん、こ、これ、おもたい」


 センお爺さんは店主さんに挨拶をしながら、僕よりも先に外へ出て行ってしまいます、こんな大事な物を受け取るだなんて、これなら甘い物をねだっておけばよかったのです。


「さーて、とりあえずの礼には十分じゃて、まぁ、まだ命の恩というには足りんじゃろうけど、追々の」

「こ、これでじゅーぶんなのですよ……おとしたらいえいっけん」

「そこまで気負わんでよい、鞘から抜けぬように縛っておいた、背負っておけば問題は無いわ、背から外したければ、結わっている所を前にして解けるぞ、今は解かん方がよいがの」

「そうするのです…………あれは」

「どうした、トラ?」


 出て行ったセンお爺さんはひとまずこれで恩返しを終わりにすると言いました。

でも口ぶりからまだ僕に対しておんを返そうと思ってるようです、この刀で十分過ぎる恩返しだと思うのですが、そんな風に思いながら、センお爺さんの後ろを歩きながら、ふと、横を向いてみたら。


「じょそーのさいのうってなんだよ、それー」

「多分、女装の事だよ、男の癖に女なんだ、こいつおとこおんなだ!!」

「所詮は平民の中でも、親なしの孤児の貧民だな」

「う、うう」


 3人程でしょうか僕と同じくらいの子供が一人の子供を囲んでいるのです、囲んでいる一人は聖堂でも見覚えのある男の子、確かドラゴと言ってました。

囲まれた男の子は涙目になってました、これはいけません。


「よわいものいじめはよくないのです!」


 僕はまたしても飛び出していました。

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